• 東京地裁、原告企業の子会社に対する債権放棄をめぐり税務署の寄附金課税を支持する判決(平成27年2月24日付け)。
  • 監査法人から子会社債権全額に対し貸倒引当金を計上するよう指摘されたことを契機に、貸引計上を回避するために原告企業がした本件債権放棄に経済合理性なし。

法基通9-4-2では、子会社等を再建する場合の損失等が経済合理性を有している場合には、その債権放棄の額を損金として認める旨を規定している。本裁判事案で問題となったのは、原告企業(東証2部上場)が子会社に対してした債権放棄に経済合理性が認められるか否かという点だ。

債権放棄の発端は、原告企業グループが多額の純損失を計上し、継続企業の前提に重要な疑義が存在している旨を公表したことに始まる。原告企業は、再建に必要な資金調達のため、原告企業グループの再建計画を策定し、金融機関との間でシンジケート・ローン契約を締結した。また、原告企業は、子会社の経営状況が悪化していたため、支援の一環として子会社に対する債権放棄を取締役会で決定し、費用処理をした。しかし、この債権放棄について税務署は、経済合理性が認められないと判断し、寄附金課税を行った。この寄附金課税を不服とする原告企業は、裁判のなかで、子会社に対する債権放棄には相当の理由があったと主張した。具体的には、監査法人による監査の際に、子会社に対する債権全額(約12億円)について貸倒引当金を計上しなければ適正意見を出せない旨の指摘があった点を指摘。この点を踏まえ原告企業は、①貸倒引当金を計上した場合には金融機関からの信頼を失うことが予想されたこと、②配当可能原資(余剰金)が枯渇することで投資家等の信用を失う恐れがあったことから、貸倒引当金の計上を回避するために債権放棄(約3億円)に踏み切ったと主張した。しかし、この原告企業の主張に対し裁判所は、原告企業と金融機関との間で締結された契約書に、経常損益に減価償却費を加算した金額をマイナスとしないことを遵守する義務があったと認める一方で、貸倒引当金の計上を回避しなければならない義務があったとは認められないと指摘。また、裁判所は、投資家等の信用喪失を回避すべきことが経営判断の1つとして考えられても、これを経済合理性の問題であると捉えるのは適切ではないと指摘した。そのうえで、裁判所は、貸倒引当金の計上を回避するための本件債権放棄は客観的にみて経済合理性があると認められないとしたうえで、原告企業の請求を斥けた。

(情報提供:株式会社ロータス21)