• 審判所、請求人の一連の馬券購入行為による払戻金は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」と認めず。一時所得と判断(平成30年3月22日公表裁決)。
  • インターネットを利用して頻繁に馬券を購入していたが、損益の状況が大きく変動するなど、損失も発生。

当たり馬券で得た払戻金に係る所得は原則一時所得に該当し、外れ馬券は必要経費に該当しないとされているが、最高裁判所平成27年3月10日判決により「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」については雑所得との判断が示されている。本事案は、請求人の馬券の払戻金に係る所得について、一時所得か雑所得かで争われたもの。請求人は平成27年最高裁判決に基づき、雑所得に当たるなどと主張していた。

審判所は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」であるか否かは、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当であるとの平成27年最高裁判決を引用。そのうえで、馬券を自動的に購入するソフトウェアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をするなどして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するといえる場合には、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」に当たると解するとしている。

これを踏まえ審判所は、請求人は馬券を自動的に購入するソフトウェアを独自の条件設定を用いて利用し、インターネットを介して多数回かつ頻繁に馬券を購入していたが、そのうちの一年は損失が発生しており、確定申告をした各年で損益が大きく変動していることを指摘。請求人の的中確率が低い反面、一口で高額の払戻金が得られる可能性のある馬券の購入による利益が当該損益の一定割合を占めていることからすると、その期間、頻度、購入規模の大きさ等を考慮しても、多額の利益が恒常的に上がると期待し得るものであったとは認められないとした。加えて、購入履歴及び払戻金のデータの一部が削除又は破損していたため、個々の馬券の種類やその金額のすべてが明らかにされていない以上、ソフトウェアを使用し網羅的に馬券を購入していたといえないと判断した。以上のことから審判所は、請求人の一連の馬券購入行為は営利を目的とする継続的行為ではないとして雑所得とは認めず、一時所得とするのが相当であるとした。

(情報提供:株式会社ロータス21)