• 政府税調(会長・中里実東大大学院教授)は10月23日、連結納税制度の簡素化に向けた検討に着手。
  • 企業側からは、申告書作成の事務負担や税務調査時の負担が大きいといった指摘も。政府税調では企業の税務申告の実務等を踏まえ中長期的視点から簡素化等を検討。

連結納税制度は、親会社とすべての完全子会社(親会社が直接又は間接に100%支配する内国法人)を適用対象として、親会社がグループの法人税の申告・納付を行うもので、平成14年度税制改正により創設されたものである。単体申告との選択制であるが、いったん選択した場合には原則として継続して適用しなければならない。

連結納税制度の適用状況をみると、平成22年度税制改正により連結子法人の欠損金の持込制限が緩和された影響で、適用件数は近年増加傾向である。もっとも親法人約3,000社(上場企業等)のうち、連結納税制度の適用法人は約600社である。約2,200社は連結納税制度を適用可能であるが選択申請をしていない。

財務省の説明によると、連結納税制度の事務負担について企業側からは、申告書作成の事務負担が大きいといった指摘や税務調査により過去の申告の修正等が生じると事務作業が大変であるなどといった指摘があった。また未導入企業からは、決算時の事務負担増により連結納税制度を導入すると45日ルールが守れなくなることを懸念する指摘や税務調査の事務負担増を懸念する指摘もあった。

総会で財務省は、連結納税制度を取り巻く状況について、導入当時は企業グループの意思決定や情報が親法人に集約化されることを念頭に制度設計がなされているものの、その後の企業経営の進展をみると子会社のすべての情報や意思決定が親会社に集約されているわけではないといった状況も見受けられると指摘。そのうえで財務省は、企業経営の実態を踏まえた制度の簡素化や関連する制度(グループ法人税制や組織再編税制)との関係での課税の中立性や公平性といった点が課題になるとした。財務省の説明に対し出席委員からは、連結納税制度の簡素化を求める意見が相次いだほか、完全子会社を対象とする枠組みは維持すべきとの意見が相次いだ。

会合後の記者会見で中里会長は、企業の税務申告の実務や租税回避の防止等といった観点等を踏まえながら議論をする必要があるので、専門家会合を開催して引き続き議論を行っていく方針を示した。なお、専門家会合で議論される内容は来年以降の総会で活用される方向だ。

(情報提供:株式会社ロータス21)