• 被相続人の特定事業用資産(宅地等)について納税猶予の適用を受ける場合であっても、被相続人の居住用の宅地等に小規模宅地特例を適用することは可能。
  • ただし、被相続人の宅地等について小規模宅地特例の適用を受ける者がいる場合には、その適用面積相当を納税猶予の対象となる宅地等の対象面積から控除。

個人版事業承継税制は、個人事業者の事業用土地や事業用建物などの承継に係る相続税・贈与税を100%猶予するもの。相続税に関する納税猶予制度では、特例事業相続人等が相続等により被相続人の事業に係る特定事業用資産のすべてを取得(平成31年1月1日から平成40年12月31日まで)した場合には、その特例事業相続人等が納付すべき相続税のうち、特例事業用資産(特定事業用資産で相続税申告書に納税猶予を適用する旨の記載があるもの)の課税価格に対応する相続税の納税が猶予される(措法改正案70条の6の10)。納税猶予の対象となる特定事業用資産は、被相続人の事業(不動産貸付業等を除く)の用に供されていた資産で、相続開始日の前年分の事業所得に係る青色申告書(65万円控除)の貸借対照表に計上された宅地等(上限面積は400㎡)、建物(上限床面積は800㎡)、一定の減価償却資産が該当する(同②一)。

この個人版事業承継税制は、既存の特定事業用宅地等に係る小規模宅地特例との選択制である。一方で、個人版事業承継税制による納税猶予の適用を受ける場合であっても、被相続人の居住の用に供されていた宅地等については、特定居住用宅地等に係る小規模宅地特例を適用することができる。また、被相続人が個人版事業承継税制の対象外となる不動産貸付業を行っている場合には、その貸付事業の用に供されていた宅地等は個人版事業承継税制の適用はできないものの、貸付事業用宅地等に係る小規模宅地特例を適用することができる。だが、ここで注意が必要なのは、居住用や貸付事業用の宅地等に係る小規模宅地特例を適用する場合には、個人版事業承継税制を適用する際に特定事業用資産である宅地等の対象面積(上限400㎡)が減額される点だ。被相続人から相続等により取得した宅地等について小規模宅地特例の適用を受ける者がいる場合には、その特例適用面積相当が特定事業用資産である宅地等の対象上限面積400㎡から控除される(同②一イ)。個人版事業承継税制の適用の際には、小規模宅地特例との比較検討が欠かせないといえるだろう。

(情報提供:株式会社ロータス21)