• 土地の相続税評価をめぐり、納税者が旧広大地通達には構造的な瑕疵があることから不動産鑑定士による鑑定評価額により評価すべきと主張していた税務訴訟で、納税者側が敗訴(東京地裁平成30年9月27日判決)。
  • 納税者が主張する鑑定評価額は合理性がないことから採用できず。

広大地の相続税評価について平成29年度税制改正では、広大地補正率により面積に応じて比例的に減額する評価方法(以下「旧広大地通達」)から、各土地の個性に応じて面積・形状に基づき評価する方法に見直されることとなった。この改正は、平成30年1月1日以後に相続等により取得した宅地等により適用される(改正に伴い旧広大地通達は廃止されている)。

本件では、納税者が相続により取得した本件土地を含む各土地の評価方法が争われるなかで、旧広大地通達(旧評価通達24-4)に一般的な合理性が認められるのか否かが問題となっていた。納税者は、旧広大地通達には本件土地のような戸建住宅地域における地積過大地を適切に評価できないという構造的な瑕疵があると指摘。納税者は、旧広大地通達が全面的に廃止され、地積過大地の評価のための規定として評価通達20-2(地積規模の大きな宅地の評価)が新設されたことについて、旧広大地通達には地積過大地の評価における構造的な瑕疵があったために改正を迫られたものであり、これは旧広大地通達に構造的な欠陥があるという納税者の主張を裏付けるものであると指摘した。そのうえで納税者は、本件土地は不動産鑑定士による鑑定評価額により評価すべきと主張した。

裁判所は、納税者の指摘する評価通達の改正は実際の取引価額と相続税評価額との乖離を解消するとともに適用要件の明確化を図ることを目的としたものであるから、もともとの旧広大地通達の定めに納税者の主張するような構造的な瑕疵があったことを前提とするものではなく、納税者の主張を裏付けるものではないとしたうえで、旧広大地通達は一般的な合理性が認められるとした。そして裁判所は、本件土地には旧広大地通達の適用要件の1つである潰れ地が生じることなく戸建住宅分譲用地として開発することができるから本件土地に旧広大地通達の適用はないと判断。また、納税者が主張する鑑定評価額は合理性がなく、本件土地につき評価通達の定める評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があるとは認められないと判断したうえで、課税処分の取り消しを求めた納税者の請求を棄却した。

(情報提供:株式会社ロータス21)