• 経産省が“インセンティブプラン導入の手引”を改訂、譲渡制限付株式報酬(RS)と同等の報酬を非居住者役員に支給する場合、「業績連動給与」の損金算入要件満たす必要があるとの新たな取扱いを示す。
  • 今回の改訂では、株式交付信託について、役員が株式等を退職時に受け取った場合は退職所得となるといった従来からの取扱いも明記。

経済産業省から公表されている『「攻めの経営」を促す役員報酬~企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引~』には税務上の取扱いに関するQ&Aも多数掲載され、役員給与税制の実質的な実務指針となっているが、同省は3月8日付でいくつかのQ&Aを改訂している。

今回の改訂で最も大きな変更点と言えるのが、事前確定届出給与(リストリクテッド・ストック=RS)に相当する金銭報酬を非居住者役員に交付する場合の取扱いの新設だろう(Q18)。RSを損金算入するためには事前確定届出給与の損金算入要件を満たす必要があるが、海外子会社の役員など非居住者の役員はそもそも日本の証券会社での口座開設が困難なため、株式に代えて、架空(ファントム)の株式を付与し一定期間における株価を反映させた報酬を現金で支給する「ファントム・ストック」を支給することが多い。ファントム・ストックを損金算入するためには業績連動給与の損金算入要件を満たす必要がある。そこでQ18では、実質的に同じ報酬であるにもかかわらず、日本の居住する役員に支給する場合には「事前確定届出給与」、非居住者である役員に支給する場合には「業績連動給与」の損金算入要件を満たせば損金算入を認めることを明らかにしている。また、非居住者である役員へのファントム・ストックを業績連動給与として損金算入するためには、有価証券報告書等において、非居住者役員への金銭報酬は居住者役員に付与する株式報酬に相当するものである旨などを開示することも求める。非居住者である役員に実質的なRSを支給する場合にも損金算入を認める途を開いたという点、海外子会社を抱える企業にとっては朗報と言えそうだ。

また、株式交付信託について、役員が株式等を在職時に受け取った場合は「給与所得」、退職時に受け取った場合は「退職所得」になるといった従来からの取扱いを明文化したほか(Q16)、病気や不祥事により業績連動給与の一部を支給しなかった場合でも、減額する額等の算定方法を予め開示していれば、損金算入要件を満たし得ることを明らかにしている(Q73)。

(情報提供:株式会社ロータス21)