• 経済産業省は、第三者への事業売却による事業承継を税制措置で支援することを要望。売り手には譲渡益課税の軽減、買い手には不動産取得税・登録免許税の軽減等を想定も、実現するかは未知数。

経済産業省の令和2年度税制改正要望では、第三者への事業承継の促進に資する税制措置の創設が盛り込まれている。事業承継税制の抜本的見直し及び個人版事業承継税制の創設に続く第三弾といえるものだが、これまでの相続税・贈与税ではなく、所得税・法人税に対する税制優遇ということになる。昨今では、後継者が不在であることなどを背景に、黒字企業を含めた企業の休廃業・解散件数が増加傾向にあり、経済産業省では現状を放置すれば価値のある企業や技術、ノウハウ等が失われる可能性があるとしている。

具体的な内容は検討中であるが、売り手である経営者側と買い手である企業側の両面での措置が想定されている模様だ。経営者側では退職給与という側面から株式を譲渡した際の譲渡益課税を軽減、企業側では、M&A等を行った際に係る登録免許税・不動産取得税を軽減することが想定されている。ただ企業の買収を税制で支援することへの疑問など、税制措置を講じることへの反対意見もあり、実現されるかどうかは未知数だ。税制調査会での議論の行方が注目される。

また、経済産業省では、中小企業向けの税制措置として中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例や中小法人の交際費課税の特例について、適用期限を2年間延長することを求めているほか、エンジェル税制の見直しを求めている。エンジェル税制では、投資段階では①対象企業への「投資額-2,000円」をその年の総所得金額から控除、②対象企業への投資額全額をその年の他の株式譲渡益から控除できるという2つの優遇措置が設けられているが、例えば、①の優遇措置については、設立3年未満の中小企業者であることの要件が付されている。経済産業省によれば、設立5年以内のニーズとしては資金調達が最も高いとしており、この「3年未満」とされている要件を「5年未満」に緩和することなどを求めている。

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(情報提供:株式会社ロータス21)