• 風評被害により受領した損害賠償金が非課税所得に該当するか否かが争われた事案。
  • 審判所は、賠償金は突発的な事故により、事業に係る棚卸資産について損失を受けたことにより取得したものであり、収入金額に代わる性質を有するものと指摘。非課税所得には該当しないと判断。

本件は、肉用牛の販売等を行う請求人が原子力発電所の事故による風評被害等により電力会社から受領した損害賠償金について、原処分庁はその支払いが合意された年分の事業所得に係る総収入金額に算入したが、請求人は①当該損害賠償金は非課税所得に該当する、②仮に非課税所得に該当しないとしても、その対象となる肉用牛を売却した年分の総収入金額とするべきであるなどとして、原処分の取消しを求めたものである。

審判所は、本件賠償金は風評被害による肉用牛の売却に係る価額の下落額、肉用牛の家畜評価額と売却に係る価額との差額、出荷制限により生じた損失及び消費税等相当額などを損害として行われた賠償金の請求に対して、電力会社から支払われたものであると指摘。賠償金は原発事故という突発的な事故により、事業に係る棚卸資産につき損失を受けたことにより取得する損害賠償金であって、事業に係る収入金額に代わる性質を有するものと認められるとし、非課税所得(所法9①十七)には該当しないとの判断を示した。

また、本件賠償金の収入すべき時期については、所得税法上、収入の原因たる権利が確定的に発生した場合に、その時点で所得の実現があったものと解すべきであるとした。その上で、賠償金の支払いは電力会社が本件受託者(請求人が肉用牛の損害に対する賠償金の請求などの事務を委託している)からの請求書の内容を確認した上で、必要な減額等を行った支払予定額を通知し、受託者が当該通知の内容に合意して初めて賠償額が決定されるものであると指摘。請求人は肉用牛を売却した日が賠償金の収入すべき時期と主張したが、賠償金の収入の原因たる権利は、受託者の合意により、各合意日にそれぞれ確定的に発生したものと認めるのが相当であるとの見解を示し、請求人の主張を斥けた。

なお、審判所は、本件各更正処分は各争点について取り消すべき理由はないとしたものの、審判所認定額により更正処分における金額を下回っている年度については、原処分庁の更正処分を一部取り消すと結論付けている。

(情報提供:株式会社ロータス21)