• 無効利息に係る過年度法人税の還付を求める事案で、令和2年3月23日、最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)が口頭弁論を開催。
  • 従前の裁判例と同様に、過年度の遡及的修正は認められないと主張する国の逆転勝訴の可能性。

本件は、いわゆるグレーゾーン金利(利息制限法の上限利率を超える部分)が無効である旨を判示した最高裁判決を受けて、貸金業者X社の破産管財人が、国に対して過年度に納付した法人税の還付を求めている事案である。

X社の破産管財人は、X社が各事業年度において受領し益金として申告していた制限超過利息等の一部が、破産手続上、過払金(不当利得)として顧客に返還すべきものであったことが事後的に確定したため、各事業年度の法人税の額が過大であったとして更正の請求を行った。これに対し税務署長が更正をすべき理由がない旨の通知処分を下したため、X社の破産管財人はその通知処分の一部の取消し等を求め提訴した。

本件の争点は、制限超過利息を受領した事業年度に遡って益金の額を減額することが認められるか否かにある。すなわち、遡及的に過年度の所得を是正することが認められるのか、あるいは、過払金返還請求権に関する損失はそれが確定した事業年度の損金として処理(前期損益修正)されるべきかということだ。

一審の大阪地裁は、類似事案である平成26年の旧武富士事件と同様に、前期損益修正の処理が法人税法22条4項に規定する公正処理基準に該当すると判示し、過年度に遡って益金の額を減額することを認めなかった。ところが、控訴審の大阪高裁では一転、破産会社には継続企業の公準が妥当しないなどの各事情を踏まえて、過年度に遡って修正した処理を認めるという従前とは異なる判断が示され、国側が敗訴した。

そして、従前の裁判例とは異なる控訴審判決を不服とした国は上告受理申立てに至ったわけだが、3月23日に開かれた口頭弁論で国は、経済的価値が現実に失われて初めて益金が減額できるという点を強調し、本件では、経済的価値を当初から失う蓋然性はなく、たとえ破産会社であっても担税力が遡って覆されるわけではないとの主張を展開した。

判決言渡しは4月23日に予定されている。旧武富士事件と同様の従前どおりの判断が示され国の逆転勝訴となるか、従前と異なる判断が示された控訴審判決が維持されるのか――控訴審判決が維持された場合、従前の実務の変更が迫られると思われるだけに最高裁の判断が注目される。

(情報提供:株式会社ロータス21)