• 土地賃借人所有の建物の収去費が、土地賃貸人の不動産所得の必要経費に算入できるかどうかが争われた事案で、審判所が原処分全部取消し(令和元年9月20日裁決)。

不動産貸付業を営む個人である請求人らは、賃借人Aに土地を貸し付け、Aはその土地の上に建てた各建物を5名の賃借人に賃貸していたところ、平成24年10月に死亡した。A死亡後、未払賃料不払いにより平成25年10月に土地賃貸借契約は解除された。その後、請求人らは、亡A相続財産法人(Aの相続人不存在により相続財産が法人化)に対し、本件各建物の収去及び本件土地の明渡しを求めて提訴し、和解が成立したが、なお土地の明渡しがされなかったため、強制執行により、平成28年3月に本件各建物の収去及び土地の明渡しが行われた。なお、本件土地は、明渡し後速やかに駐車場として賃貸されている。

原処分庁は、①本件土地は、賃貸借契約終了後、請求人らの不動産事業の用に供されておらず、②本件各建物も、取り壊されるまで所有者が本件相続財産法人であり、請求人らの不動産事業の用に供されていないこと、また、③請求人らが本件各建物収去費を支払ったのは、本件相続財産法人が負担すべき収去費用を立て替えたものにすぎないことを理由として、本件各建物収去費は家事上の経費であり必要経費に算入できないと主張した。

これに対し審判所は、「不動産の貸付業務は、基本的には、当該不動産を貸し付けてからその返還を受けるまでが一連の業務というべきところ」「請求人らは、一連の法的手続を執り、明渡しまでの手続と並行して、新たな賃借人への貸付けに取り掛かっているとみられる一方で、請求人らが本件土地を賃貸業務以外の用途に転用したことをうかがわせる事情も認められないことからすれば、請求人らの本件土地の貸付けに係る業務は、本件土地賃貸借契約の解除後本件各建物の収去に至るまで継続していたものと認められる」と判断した。

その上で、「請求人らは、本件土地から収益を得る業務を遂行するためには、本件各建物を収去する必要があり、その収去費用については、当初から、本件相続財産法人は無資力であり、自らが負担することを想定して収去までの手続を遂行し支出したものであり、客観的にみても、請求人らにおいて自ら負担するほかなかった。」として、「本件各建物収去費の支出は、客観的にみて、請求人らの不動産所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、業務の遂行上必要なものであったといえる」と結論づけ、必要経費に算入できるとした。

(情報提供:株式会社ロータス21)