• 馬券の払戻金の所得区分を巡り、控訴審は、“通常馬券”の払戻金も「一時所得」に該当すると判断。
  • 損失が生じた年の存在及びその額に対する評価が地裁との判断の分かれ目に。高裁は営利目的性を否定。

馬券の払戻金の所得区分を巡る裁判で、“WIN5馬券”以外の“通常馬券”の払戻金が「雑所得」とされた一審判決(東京地裁令和元年10月30日判決)を受け、「一時所得」に該当するとの主張が認められなかった国が控訴していたが、東京高裁第5民事部(秋吉仁美裁判長)は令和2年11月4日、“通常馬券”の払戻金を「雑所得」とした原判決を取り消し、国が逆転勝訴した。

控訴審判決は、雑所得に該当するか否かの判断基準について、原判決が示した最高裁判決(平成27年及び平成29年)の「『営利を目的とする継続的行為から生じた所得』であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である」との判断基準をそのまま引用したが、“営利性の存否”の判断については原判決と正反対の判断を示した。

東京地裁は、損失が生じている年はあるものの、納税者の行為は客観的にみて「営利を目的」とするものと判断していた。

これに対し東京高裁は、「『営利を目的とする継続的行為』といえるためには、その行為がある程度の期間継続して客観的に見て利益が上がると期待し得る行為であることが必要と解すべき」とした上で、納税者の平成22年以降5年間の利益と損失を検討し、「営利性の存否の判断(客観的にみて利益が上がると期待し得る行為の存否の判断)という観点からは平成24年の損失及びその額は、看過できない否定的な事情と言わざるを得ない」と判断した。

さらに、損失が生じた理由に特別の事情が認められないことや、納税者の馬券の購入行為の態様を踏まえ、「上記のような馬券の購入行為の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等によれば、被控訴人において回収率が総体として100%を超えることが期待し得る独自のノウハウを有していたとまでは認められず」として、納税者の一連の行為の営利目的性を否定した。

なお、実務家の注目を集めていた“金額基準”については、国側は一審同様「継続的行為該当性を肯定するには少額」である旨を強く主張したものの、高裁でも「原告が馬券を購入した金額は、継続的行為に当たるという上記の評価を支えるのに十分な金額である」との原判決の判断がそのまま維持された。

(情報提供:株式会社ロータス21)