• 審判所、事前通知の違法性が争われた事案で、当該事前通知には通則法74条の9第1項の規定は適用されないとする原処分庁の主張を退ける。
  • 一方、通知事項を欠き違法とする請求人の主張も認めず、調査担当者の電話応答などから事前通知は適法と判断。

本事案は、平成25年3月25日に行われた事前通知の違法性が争われたもの。請求人に対する税務調査の概要を時系列でみると、次のようになる。(1)平成24年11月7日、原処分庁の調査担当者が、平成21、22、23年分の所得税等の調査(当初調査)のため請求人の事務所へ臨場。(2)平成25年3月25日、調査担当者が平成24年分の所得税について、確定申告書の記載内容確認のため、当初調査に追加して調査する旨を請求人に電話で通知。(3)平成25年3月26日、請求人から電話を受けた調査担当者が、同年4月3日に調査のため請求人事務所に臨場する旨を約し、併せて帳簿書類の提示を求めた。

原処分庁は、平成24年分の所得税調査について、平成25年1月1日前から引き続き行われている調査に該当することから、通則法74条の9(納税義務者に対する調査の事前通知等)第1項の適用はないと主張。これに対し、審判所は、納税義務者について税目と課税期間によって特定される納税義務に係る調査を一の調査とみるべきであり、請求人に対する平成24年分の所得税の調査は独立した一の調査となることから、通則法74条の9第1項の適用があると指摘した。

一方、請求人は、調査担当者は電話で、「平成24年分の所得税の調査を行います」と通知したのみで、改正後の通則法に則って通知が行われていないと主張。これに対し、審判所は、調査担当者は平成25年3月25日に平成24年分の所得税の調査を追加する旨請求人に通知し、さらに同月26日、調査のために4月3日に請求人の事務所に赴くことを約し、その際に帳簿書類を提示するように求めているから、これら一連の事実を総合すると、4月3日の実地調査の対象に平成24年分の所得税が含まれる趣旨であることは請求人に通知されていると評価できると判断。調査担当者は、通則法74条の9第1項に規定する事前通知事項のうち、調査の対象税目、調査の対象期間に加え、調査の開始時期、調査の場所、調査の目的、調査の対象となる帳簿書類を請求人に対し通知しており、同項の規定に沿った事前通知を行っていることから、調査手続に違法とすべき点はないとした。

(情報提供:株式会社ロータス21)