• 市街化区域内にある無道路地(雑種地)の相続税評価(時価)が問題となった税務訴訟で、大阪地裁が相続税更正処分等の一部を取り消し(平成29年6月15日判決)。
  • 道路開設費用が高額で雑種地として利用するしかないなどの本件事情の下では、無道路地補正(20-2)により適正な時価を算定できず。納税者主張の評価額を認める。

本件で問題となったのは、納税者が相続により取得した「丙土地」を含む本件各係争不動産について、課税当局が財産評価基本通達(以下「評価通達」)に基づき評価した相続税評価額が相続開始時の時価を上回っているか否かという点である。

この点について納税者側は、丙土地を含む本件各係争不動産には評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情があると指摘し、不動産鑑定評価額により評価すべき旨を主張した。これに対し課税当局側は、評価通達に定める評価方式によらないことが正当として是認されるような特別の事情はない旨を主張した。

双方の主張に対し大阪地裁第7民事部の山田明裁判長は、納税者が主張する本件各係争不動産のうち「丙土地」のみ評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情があると認められるとしたうえで、相続税更正処分等の一部を取り消す判断を示している。

具体的にみると、大阪地裁は、市街化区域内にある丙土地(雑種地)は戸建住宅に囲まれた住宅街のなかにある相当不整形な土地で、無道路地であると認定。課税当局側による評価(評価通達に従い市街化区域内にあることから宅地に比準して評価したうえで、不整形地補正(評価通達20)及び無道路地補正(同20-2)を適用)については、無道路地補正による丙土地の道路開設費用相当額は約913万円で、丙土地の不整形地補正後の価格約550万円すら上回る金額である点などを指摘した。また、丙土地を実際に宅地として使用するためには接道義務を満たすために相当多額の費用を要し、現実的には雑種地として利用するしかないなどの本件事情の下では、無道路地補正では接道義務を満たしていないことを十分に反映することができず、これは評価通達によっては適正な時価を算定することができない特別の事情ということができるとした。そして丙土地の適正な時価について、評価通達に基づき課税当局が算定した額(約330万円)を斥けたうえで、納税者側が主張した220万円が相当であると判断。相続税更正処分等の一部(納付すべき相続税額約50万円)を取り消す判決を下している。

(情報提供:株式会社ロータス21)