• 指定管理者制度により病院を管理する納税者が自治体から支払われた委託費をめぐり、委託費のうち人件費分を課税対象とした点について、錯誤無効があるとして納付消費税の返還を国に求めた国賠訴訟で納税者敗訴(東京地裁平成30年7月26日判決)。

納税者とA市は平成18年2月、納税者を病院の指定管理者とする協定(以下「当初協定」)を締結した。納税者は、平成20年9月まで人件費分を含む委託費(指定管理料)の全額を消費税の課税対象としていた。納税者とA市は平成20年10月、当初協定を変更して委託費の支払方法を人件費分とそれ以外の経費に区分した。これを踏まえ納税者は、委託費のうち人件費分以外の経費のみを消費税の課税対象とした。その後納税者は、異議申立てにより過年度の人件費分に係る消費税の還付を求めた。これに対し税務署(原処分庁)は、人件費は管理業務の対価であるから消費税の課税対象になると判断して異議申立てを棄却した。さらに納税者は、審査請求を行ったものの、裁決は棄却に終わった。

裁決後に納税者は、A市と協議のうえ税務訴訟の提起を断念した一方で、消費税の課税関係に係る錯誤無効などを理由として国に対して損害賠償を求める国賠訴訟を提起した。裁判のなかで納税者は、平成18年2月の協定締結に関し人件費分が不課税である旨の解釈が可能であったにもかかわらず、A市から人件費分の支出は一括した委託費の支払いの形式によらざるを得ないこと(人件費分を含む委託費全体が消費税の課税対象となること)などの説明を受けてその旨を誤信したことから、人件費分を含む委託費全額を消費税の課税対象として申告した点を指摘。この申告は錯誤無効であり、人件費分に係る納付消費税は不当利得に当たるとして、国に対して返還を求めた。

これに対し地裁は、納税者はA市との間で人件費分を含む委託費全額が消費税の課税対象となる前提で当初協定を締結したうえでこれにより消費税の申告を行っているのであるから、その限りにおいては納税者の申告(公法上の意思表示)に何らかの錯誤があるとは認められないと指摘。また地裁は、納税者の主張する錯誤は人件費分について消費税の課税を回避し得るような他の解釈の余地がないと誤解したにとどまるものと言わざるを得ないと指摘。納税者の主張する錯誤が客観的に明白かつ重大であるということはできないと判断したうえで、納税者が求めた錯誤無効による不当利得返還請求を斥けた(確定済み)。

(情報提供:株式会社ロータス21)