• 審判所、外国法人の事業分割に伴う株式の交付は配当所得に該当すると判断(令和元年8月1日裁決)。
  • 外国の法令に準拠した組織再編について、法令解釈を示し配当所得に該当するかどうかを判断した初の事案に。

本件は、米国法人の株式を保有していた個人(請求人)が、米国法人が事業分割したことにより、その事業を承継した法人の株式の交付を受けたことについて、その株式の交付が配当所得に該当するか否かが争われた事案である。

審判所は、本件株式の交付が、まず①所得税法上の配当所得に該当するか、次に②配当所得から除かれる分割型分割によるものに該当するかという順に検討を行った。

①については、「米国法人の株主としての地位を有する者に対し、その米国法人の利益剰余金を原資として交付されたものと認められる」ことから、配当所得に該当すると判断した。

②については、「法人税法にいう分割は、我が国の会社法に準拠して行われる分割に限られず、外国の法令に準拠して行われる法律行為であっても、我が国の会社法上の分割に相当する法的効果を具備し、我が国の会社法上の分割に相当するものと認められる場合には、法人税法上の分割に該当するものとして取り扱って差し支えないものと考えられる」という外国の法令に準拠した組織再編については初めてとなる解釈を示した。

その上で、「我が国の会社法上の分割では、分割会社の権利義務は、吸収分割契約又は新設分割契約により、承継会社又は新設会社に一括して承継されるという一般承継の法的効果が付与される(包括承継)」のに対し、「他方、米国においては、権利義務の一般承継を特徴とする会社分割制度は存在せず、」とした上で、「本件事業分割は、その要素を欠いており、我が国の会社法上の分割に相当する法的効果を具備するものとはいえない」との判断を示している。

なお、請求人は、①米国法人の事業分割前の株価と事業分割後の米国法人2社の株価の合計額とがほぼ同額であり、当該分割の前後において、全体としての株式の価値の増減は見られない、②米国の課税上、米国法人2社双方の株主が非課税扱いとされていた、また、③本件株式の交付は、平成29年改正において新たに導入された適格株式分配に該当するものであり、この事業分割は改正所得税法の施行前に行われたものではあるが、改正法の趣旨に照らして検討すべき――などと主張したが、これらの主張はすべて排斥された。

(情報提供:株式会社ロータス21)