• 非上場株式の譲渡をめぐり、譲渡対象会社に法人税等の申告漏れがあったことが株式譲渡契約に違反するとして買主が売主に損害賠償を求めていた訴訟で、売主に約1億円の損害賠償を命じる(東京地裁平成30年3月28日判決)。
  • 地裁、譲渡契約時に申告漏れに係る未払租税債務があったことなどから契約条項に違反と判断。

特例有限会社である本件会社の全株式を保有していた個人である売主(被告)は、平成24年2月に本件会社の全株式を法人である買主(原告)に1億5,000万円で売り渡す旨の契約を締結した。その契約書には、申告条項(法人税等の適正な申告を行っており、その支払及び納付が完了している旨)や判断影響条項(経営に影響を及ぼす簿外負債や将来具体化する課税問題等が存在しない旨)が盛り込まれていた。

ところが、税務調査を受けた本件会社は、売上除外(平成21年3月期から平成23年3月期)のほか、仕入に係る請求書等の不保存(平成22年3月期から平成24年3月期)が発覚したことから、平成24年10月に修正申告を行った。そこで買主は、裁判のなかで、本件会社は売上除外や仕入に係る消費税申告漏れなどにより未払租税債務として約1億4,000万円の簿外負債が存在することになることから、契約書の申告条項や判断影響条項に違反すると主張したうえで、売主に対し約1億800万円の損害賠償を求めた。これに対し売主は、買主は本件会社の財務・税務内容を監査し、株価を算定しているので契約締結前に本件会社の税務申告の疑義等を知り得たと指摘し、買主には重大な過失があるから売主の責任は免れるべきであると主張した。

裁判所は、買主が本件会社のデューデリジェンスをしても売上除外や仕入に係る請求書等の不保存は総勘定元帳に記載がないなどの特質に照らせば、買主がこれらを認識しなかったことに過失があるとはいえないとした。そして裁判所は、本件会社には譲渡契約当時において売上除外や仕入に係る消費税の申告漏れによる未払租税債務(簿外負債)が存在し、将来具体化する課税問題があったことから、申告条項や判断影響条項に違反していると判断した。具体的な損害額については、公認会計士による報告書によれば譲渡契約当時の本件会社の株式価格はゼロ円であり、未払租税債務が存在していないと仮定した場合の譲渡契約当時の株式の価格は少なくとも約9,700万円であると認めたうえで、本件会社の株式の売主に対して約9,700万円の損害賠償を命じた。

(情報提供:株式会社ロータス21)