• 請負契約に基づく機械装置の取得時期が争われた税務訴訟、控訴審も納税者が敗訴(東京高裁平成30年9月5日判決)。
  • 高裁、請負契約で検収と同時に引渡しがあったとされる以上、機械装置の引渡しは検収がされた平成25年5月であると指摘。平成25年3月期内に取得しているとした納税者の主張を斥ける。

納税者(法人)は、請負業者であるA社との間で自社工場に設置する機械装置に関する請負契約を締結。契約では、A社が機械装置を製造納入し、納入された機械装置の機能が問題なく動作するかを確認後、納税者が検収書に押印することで検収が完了し、その検収と同時に成果物の引渡しがあったものとされていた。機械装置は、平成25年2月に工場に設置され稼働したものの、翌日以降に不具合が生じたために検収には至らなかった。その後A社による不具合の調整により、平成25年5月から安定して稼働したため、納税者は平成25年5月に検収書を発行した。納税者は、平成25年3月期の法人税申告の際に機械装置に係る減価償却費を損金とした。これに対し税務署は、納税者は機械装置を平成25年3月期末時点で取得していないことから減価償却費を損金不算入とする課税処分を行った。これを不服とした納税者は、平成25年3月期中に機械装置が事業の用に供されている(機械装置を用いて製品の出荷販売実績を上げている)としたうえで、平成25年3月期において減価償却費は損金に算入できると主張していた。これに対し原審の東京地裁は、請負契約については注文者が請負人から完成した工作物の引渡しを受けることによりその工作物の所有権が移転するものと解されるとしたうえで、納税者が機械装置を取得したのは早くとも平成25年5月であることから、平成25年3月期において減価償却費を損金に算入することはできないと判断した。

地裁判決を不服とした納税者は、控訴審のなかで、平成25年3月期末以前に機械装置が初期の性能を有することを確認済みであるから平成25年3月期内に機械装置を取得しているなどと主張した。これに対し高裁は、本件請負契約では検収と同時に引渡しがあったとされている以上、機械装置の引渡しは検収がなされた平成25年5月であると言わざるを得ないなどと指摘。本件の機械装置は「各事業年度終了時において有する減価償却資産」(法法31①)に該当しないから平成25年3月期において減価償却費を損金に算入することはできないと判断した地裁判決を支持した。

(情報提供:株式会社ロータス21)