• 令和5年度税制改正で実現した源泉徴収票等の電子交付に必要な従業員の承諾手続の簡素化について、国税庁がQ&Aを公表。法令上、「回答期限の定め」を設けることや「就業規則への記載」は特段求められないことが明確化。
  • また、本誌取材により、事前通知は一度行えば済む(毎年は不要)ことも判明。

所得税法上、「給与等の支払いを受ける者の承諾」を得ることを条件に、源泉徴収票や給与支払明細書を紙での交付に代えて電子交付できることとされている(所法226④、231②)。承諾を得る際には、あらかじめ、給与等の支払いを受ける者に対し、電子交付の種類及び内容を示す必要がある(所令353①、356①)。企業にとっては、この「事前承諾」が源泉徴収票の電子交付を進める上でのネックとなっていた。一部の従業員が回答しなければ、全社的な電子化に移行できないリスクがあるからだ。

この問題が、令和5年度税制改正で解消した。具体的には、「期限までに当該承諾をしない旨の回答がないときは当該承諾があつたものとみなす旨の通知をし、当該期限までに当該支払を受ける者から当該回答がなかつたときは、当該承諾を得たものとみなす」との規定が創設された(改正所規95の2②)。同規定は施行日(本年4月1日)以後に行う通知について適用されている(改正所規附則12)。

省令改正とともに、国税庁は関連するQ&Aを改定している((問7)〜(問9))。問7は省令の内容を解説するもの。問8は、省令中「期限までに」とある部分についてその具体的な長さを問うものであり、これに対し「法令上、回答期限の定めはありませんが、受給者の方の勤務状況等を考慮し、回答に必要な期間を十分に見積もっていただくようお願いします」との回答がなされている。(問9)は事前承諾に係る通知の方法や就業規則での周知の必要性について問うものであるが、回答においては「適宜の方法(例えば、電子メール、書面等)」で差し支えないことが明記され、また、就業規則での記載は「法令上特段求められておりません」とされている。いずれも企業にとっては一定の裁量が認められた歓迎すべき内容となっている。

このほか、Q&Aにはないが、企業からは「事前通知は源泉徴収票を電子交付するたびに“毎年”行う必要があるのか」との疑問が聞かれる。この点、本誌取材により、同じ従業員に毎年同じ通知を行う必要はない、すなわち「一度通知を行えば済む」ことが確認されている。

(情報提供:株式会社ロータス21)