• 国税庁、TOB成立後に上場廃止となった株式をTOBによる買付者などに株式を譲渡した際、認識誤りにより多くの申告漏れがあると注意喚起。譲渡益があるにもかかわらず無申告の場合は申告が必要。
  • サンプル調査の結果では199件に申告漏れがあり、申告漏れ所得金額は4億7,495億円、追徴税額は7,258万円。

株式公開買付(TOB)が増加する中(下表参照)、国税庁は、TOB成立後、上場廃止となった株式をTOBによる買付者などに株式を譲渡した際の申告漏れが見受けられると注意喚起を行っている。

TOBにより株式を譲渡した場合、例えば、特定口座(源泉徴収あり口座)内で譲渡された場合であれば、特定口座内で譲渡損益が計算され、申告不要となる。また、簡易特定口座であれば、証券会社から送られてくる年間取引計算書をもとに確定申告すれば簡便に申告が可能だ。問題となっているのは、TOB成立後、TOBに応じなかった株主だ。このケースでは、買付会社(対象企業の総株主の議決権の90%以上を所有)からの株式等売渡請求を受け、株式を売り渡すことになるのが一般的だ。この場合、上場廃止後の取引となり、特定口座内での取引ではないため、仮に譲渡益が生じた場合には確定申告が必要になる。また、証券会社を通さない相対取引となるため、譲渡損失が生じた場合であっても、他の上場株式等の譲渡益との損益通算や繰越控除はできない。

国税庁が買付会社から税務署に提出されている「株式等の譲渡の対価の支払調書」(法定調書)に基づきサンプル調査を実施したところでは、379件のうち、申告漏れ等があったのは199件にのぼり、申告漏れ所得金額は4億7,495億円、追徴税額は7,258万円(1件当たりの追徴税額は36万円)になっていることが分かった。

ただし、申告漏れがあった件数の中に重加算税が賦課された不正事案はなく、ほとんどが特定口座で申告が完了していたとの認識誤りでのものだったという。このため、国税庁では、上場廃止後に株式をTOBによる買付者などに買い取られた場合には、申告漏れがないかどうかの確認をしてほしいと注意喚起を行っている。

(情報提供:株式会社ロータス21)