• 金融庁の令和6年度税制改正要望では、ファンドを介したクロスボーダー投資については、投資家に代わってファンドが租税条約の申請手続きを可能にするよう要望。
  • 自己発行保有の暗号資産に続き、第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税の見直しを求める。

金融庁の令和6年度税制改正要望では、国際金融センターを実現するための税制上の措置として、ファンドを介したクロスボーダー投資について、租税条約を適用することができるよう所要の措置を講じることを求めている。日本が締結している租税条約では、二国間の投資を促進する観点から、クロスボーダー投資について、源泉地国での源泉徴収を減免する措置が盛り込まれている。しかし、ファンドを介したクロスボーダー投資については、原則としてファンドレベルではなく、受益者である投資家レベルで租税条約の申請手続きをすることとされているため、実務上申請手続きをすることは困難であるのが実情だ。このため、金融庁では、ファンドが投資家に代わって租税条約の申請手続きをすることができるよう求めている。また、令和6年3月31日で期限切れとなる店頭デリバティブ取引の証拠金に係る利子の非課税措置については、少なくとも適用期限の延長を求めたほか、昨年に引き続きテリトリアル課税の導入を求めている。

令和5年度税制改正で期末時価評価課税の対象外となった自己発行・自己保有の暗号資産に続き、今回は、第三者保有の暗号資産についても期末時価評価課税について見直すべきとしている。期末時価評価課税は、キャッシュ・フローを伴う実現利益がない中で継続して保有される暗号資産についても課税を求めるものであり、国内においてブロックチェーン技術を活用した起業や事業開発を阻害するものであるとしている。

NISAについては、更なる利便性向上として、金融機関変更に伴う通知書のデジタル化や、郵送で行っている口座開設10年後の所在地確認のデジタル化などを求めている。また、令和5年度税制改正でも長期検討課題となった金融所得課税の一体化(金融商品に係る損益通算の範囲をデリバティブ取引及び預貯金等にまで拡大)や、上場株式等による物納要件の緩和を求めている。上場株式等による物納については、不動産等と同じく第1順位とされているが、「延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること」との要件が付されているため、上場株式等の物納は一部の利用に限られていると指摘している。

(情報提供:株式会社ロータス21)