• 不動産販売業者が所有する土地持分の評価損をめぐり、審判所が法人税更正処分の全部を取り消す裁決を行う(平成26年12月1日)。
  • 審判所、納税者は土地持分を売却する意向を有していた(販売することができる状態であった)ことなどを認定したうえで、本件土地持分は棚卸資産と判断。低価法による棚卸資産評価損を認める。

今回紹介する裁決事例で争われたのは、納税者(不動産販売業者)が所有する本件土地持分について、棚卸資産として低価法による評価損を計上することができるか否かという点だ。事実関係をみると、納税者は、本件土地持分の取得時点では本件土地持分を固定資産に計上していた。その後、納税者は、本件土地持分が販売用不動産として開発できる状態になったと判断し、本件事業年度末において棚卸資産に振り替えた。そして、本件事業年度の法人税申告の際に納税者は、本件土地持分に関し低価法評価損約3億円を計上した。だが、原処分庁は、本件土地持分に関する具体的かつ確実な事業計画の存在が税務調査などで確認できなかったことなどを理由に、本件土地持分は固定資産に該当すると判断したうえで、評価損約3億円の損金算入を否認する法人税更正処分を行った。この処分を不服とする納税者は審査請求のなかで、複数の法人と本件土地持分の売却交渉をした事実などを踏まえれば、納税者が本件土地持分を継続して販売目的で所有していたことは明確であると主張した。対する原処分庁は、納税者は本件土地持分を相当程度の期間継続して保有することを予定していたため固定資産とする会計処理を選択していたと指摘。また、原処分庁は、本件土地持分上に新築する建物の建築確認許可が取れていないことなどを指摘し、販売目的で所有していたとは認められないと主張した。

審判所は、本件土地持分の取得後の状況等について、納税者は本件土地持分上に新築する建物の建築確認済証の取得を待たずとも、本件土地持分を売却する意向を有していたと推認できると認定した。また、本件事業年度の状況については、納税者が本件土地持分を販売することができる状態であったと認定。さらに、納税者が本件土地持分の取得時に固定資産に計上していた理由については、自社所有の状態を継続する目的があったとは認められないとした。これらの認定事実などを踏まえ審判所は、納税者は本件土地持分を本件事業年度末において販売目的で所有していた(本件土地持分は棚卸資産である)と判断し、低価法による評価損約3億円の損金算入を認めた。

(情報提供:株式会社ロータス21)