• 自民党の「家族の絆を守る特命委員会」が相続税の“遺言控除”の導入などを提言。
  • 遺言に基づいて相続がされた場合に、相続税の基礎控除額に一定額を上乗せ。今後党税調で検討へ。
  • 現在、法制審議会で検討されている相続法制の見直しは、来年春頃に中間試案を取りまとめる方向。

非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする旨を規定した民法900条4号ただし書きを違憲と判断した最高裁平成25年9月4日判決を受け、同判決が法律婚を尊重する日本の伝統的な家族観に好ましくない影響を与えかねないという点から、家族の絆を守るための政策を積極的に検討するための「家族の絆を守る特命委員会」(委員長・古川俊治参議院議員)が自民党内に設置されるとともに、法務省内でも相続法制の見直しに関する検討が進められている。

9月10日に自民党本部で開催された「家族の絆を守る特命委員会」では、「家族の絆を強くする税制についての提言」の取りまとめが行われた。

具体的な内容は、家族の絆を強くする税制として、「遺言控除」の導入と「夫婦控除」の導入を提言するもの。「遺言控除」は、遺産分割をめぐる相続紛争を抑止することなどを目的として、遺言作成に税制上のメリットを与えるという観点から制度の導入が提案されたもの。具体的には、被相続人の遺言に基づいて相続がされた場合に、相続税の基礎控除額に上乗せして一定額を控除する。控除額に関し提言では、たとえば控除額としては数百万円程度の控除枠を設けることにより、税額として数十万~数百万円程度を減額し、これにより実質的に公正証書遺言の作成費用などを回収できるようにすることが考えられると指摘されている。

「夫婦控除」は、夫婦(法律婚)の世帯を対象に、配偶者の収入が103万円を超える場合にも適用される新たな控除制度のこと。平成26年11月に政府税調が取りまとめた「夫婦世帯を対象とする新たな所得控除を創設する案」と同様の考え方に基づくものだ。

なお、9月10日の会合で法務省は、現在、法制審議会民法(相続関係)部会(部会長・大村敦志東大大学院教授)で検討が進められている相続法制の見直しに関する議論の状況を報告した。法務省が提示した資料によると、現時点で相続法制の見直しに関する確定した方向性は打ち出されていない。今後は、来春(平成28年)頃に相続法制の見直しに関する中間試案を取りまとめる予定で検討が続けられる方向だ。

(情報提供:株式会社ロータス21)