• 請求人(妻)の夫に対する実地調査後に期限後申告をした請求人に対する無申告加算税の一部を審判所が取り消す(平成29年9月26日裁決・関裁(所)平29-6、同7)。
  • 調査担当者が請求人名義の不動産から生じる所得を夫が申告していることに是正が必要との認識を持っていなかったこと等を認定。期限後申告は決定予知に非該当。

期限後申告が「調査により決定があることを予知してされたものでないとき」は、15%の無申告加算税が10%に軽減される(事前調査通知前までの場合は5%)。本件は、請求人による所得税等の期限後申告が調査により決定を予知してされたものであるか否かが問題となったものである。

請求人(妻)とその夫及び夫の姉はそれぞれ不動産を所有していたが、関与税理士は請求人名義及び夫の姉名義の不動産から生じる所得を夫の不動産所得として申告し、請求人の申告は行わなかった。関与税理士に対し夫の所得税等の実地調査の事前通知をしたうえで調査を行った調査担当者は、各不動産から生じる所得の帰属を判断するための調査や各名義人の不動産所得として申告すべきである旨の指摘を行わなかった。調査後に関与税理士は、各不動産から生じる不動産所得の申告を各名義(請求人・夫・夫の姉)どおりにやり直したい旨の本件申出をした。これを受け請求人は、請求人名義の不動産に係る期限後申告をしたが、無申告加算税(15%)が賦課された。これを不服とした請求人は、関与税理士は原処分庁から指摘等を受けることなく自主的に期限後申告書提出の意思を示したため、決定があるべきことを予知してされたものでないときに該当する旨を主張し、無申告加算税の一部取消しを求めた。

審判所は、決定予知の判断に当たっては調査の内容・進捗状況、それに関する納税者の認識、期限後申告に至る経緯、期限後申告と調査の内容との関連性の事情を総合考慮して判断すべきとした。本件については、請求人は実地調査を認識していたと認める一方で、関与税理士は調査担当者の指示によることなく同職員に本件申出を行い、期限後申告書の提出に至ったと認定した。そして期限後申告と調査の内容との関連性等については、調査担当者は請求人名義の不動産から生じる不動産所得をその夫が申告していることに疑問又は是正を要するとの認識を持っていなかったことなどから、本件申出は期限後申告に係る調査を契機としたものではないと判断。請求人による期限後申告書の提出は決定があることを予知してされたものでないと結論付けた。

(情報提供:株式会社ロータス21)