• 個人版事業承継税制、青色申告者であれば、医業や農業など幅広い業種で特例の適用の対象に(不動産貸付業等は除く)。
  • 土地・建物に加え、機械器具備品(診療機器等)、車両運搬具、生物(果樹等)、無形償却資産(特許権等)など事業に応じた多様な事業用資産の課税価格に対応する相続税等が納税猶予の対象に。

個人版事業承継税制は、10年間の限定措置として、事業用宅地や事業用建物などの事業用資産の承継に係る相続税・贈与税を100%納税猶予するものである。相続税の納税猶予制度では、認定相続人(承継計画に記載された後継者で、経営承継円滑化法に基づく認定を受けた者)が平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に相続等により特定事業用資産を取得したうえで事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定相続人が納付すべき相続税のうち相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する相続税の納税が100%猶予される。なお、承継計画は、平成31年4月1日から5年以内に提出する必要がある。特定事業用資産とは、被相続人の事業(不動産貸付事業等を除く)の用に供されていた土地(面積上限400㎡)、建物(床面積上限800㎡)及び建物以外の減価償却資産(固定資産税又は営業用として自動車税若しくは軽自動車税の課税対象となっているものその他これらに準ずるものに限る)で青色申告書に添付される貸借対照表に計上されているものをいう。青色申告書では、事業用の資産と非事業用の資産を適切に区分していなければならない。被相続人は相続開始前に青色申告の承認を受けていることが必要であるとともに、認定相続人も相続開始後に青色申告の承認を受けていなければならない。

ところで、平成31年度税制改正で個人版事業承継税制が創設されるにあたり、実務家が関心を寄せていたのが同税制の適用について個人事業者の業種に制限があるのか否かという点だ。本誌取材によると、青色申告の承認を受けている青色申告者であれば、幅広い業種で個人版事業承継税制の適用が受けられることがわかった(不動産貸付業等は除く)。たとえば、個人で病院を営む者や農業を営む農家なども適用の対象となる方向だ。このため、納税猶予の対象となる建物以外の事業用減価償却資産は多様なものとなる。具体的には、機械器具備品では工作機械や医療用の診療機器等が、生物では乳牛等や果樹等も対象となるほか、無形償却資産(特許権等)なども特定事業用資産の対象となり得る方向だ。

(情報提供:株式会社ロータス21)