• 高額譲受けの場合の購入価額と時価との差額が売上原価として損金算入できるか否かが争われた事件。
  • 東京地裁は令和元年10月18日、当該差額は「寄附金の額」に該当し「売上原価」に当たらないと判断、納税者が敗訴した。

本件は、不動産業を営む原告(買主X社)が売主Y社から時価(約7,000万円)を超える約1億8,000万円で購入した土地を約5,000万円で売却し、購入価額全額を売上原価として損金に算入して法人税の確定申告をしたが、原処分庁は購入価額のうち時価との差額約1億1,000万円の損金算入を認めなかったため、原告が法人税の更正処分等の取消しを求めたものである。なお、この購入価額は売主Y社が買主X社に対し約1億8,000万円の債務(本件債権)を負っていたことから、本件債権とX社のY社に対する当該土地の売買代金債務とを対当額で相殺することを前提に決められたものであった。

原告は、低額譲渡については法人税法37条7項、8項により、時価と譲渡金額との差額を「寄附金」と認定されるが、時価を超える額の対価で資産を譲り受ける高額譲受けについては、法人税法132条の同族会社の行為計算否認規定を適用するほか、時価に引き直して課税することができるとする法律の根拠は存在しないなどと主張した。

これに対し東京地裁は、高額譲受けが行われた場合において、当該資産の「購入の代価」をどのように評価すべきかについては、法人税法や法人税法施行令に直接の規定は設けられていないとした上で、法人税法37条7項及び8項の規定の解釈に基づいて、法人が時価よりも高額の売買代金により不動産等の資産を購入した場合も、売買代金と時価との差額は買主たる法人から売主に「供与」された「経済的な利益」であり、そのうち「実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額」は「寄附金の額」に該当することになるから、損金算入限度額を超えて損金の額に算入されないとの見解を示した。

そして、当該対価の額と当該資産の時価との差額について、その全部又は一部が「寄附金の額」と評価される場合には、損金の額への算入が制限されるのであるから、そのような扱いを受ける当該差額は、当該資産の販売の収益に係る費用として当然に損金の額に算入される「売上原価」とは異質なものといわざるを得ず、「売上原価」とは異なる費用又は損失の額として別途損金該当性を判断すべきものと結論づけた。

(情報提供:株式会社ロータス21)