• 国が上告受理申立てを行っていた非上場株式の低額譲渡課税事案に対して、最高裁第三小法廷(林景一裁判長)は1月21日、上告審として受理する決定を行い、当事者に通知した。
  • 裁判官全員の意見一致により、「民訴法318条1項の事件に当たる」としており、控訴審の結論が見直される公算。

本件は老舗総合メーカー(非上場株式会社)の事業承継対策(相続税対策)事案である。経営者Aは自身の有していたB社株式のうち72万5千株を配当還元価額(1株当たり75円)で有限会社Cに譲渡した。この譲渡によりB社についてのAの持株比率は、15.88%から8.00%に、Aの親族と合計すると、22.79%から14.91%になった。課税庁は、時価は類似業種比準方式により1株当たり2,505円であるとして更正処分を行った。

最高裁第三小法廷は令和2年1月21日、「非上場株式の譲渡が低額譲渡である。」とする国の上告受理申立てに対して、上告審として受理する決定を行った。口頭弁論の期日を令和2年3月3日に指定した。

原審である東京高裁平成30年7月19日判決は、「租税法の解釈は原則として文理解釈によるべき」「『課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の15%未満である場合におけるその株主の取得した株式』に該当するかどうかの判定(株主区分の判定)については、その文言どおり、株式の取得者の取得後の議決権割合により判定されるものと解するのが相当である。」などと判示し、Aの相続人の課税処分取消請求の大部分を認容していた。

これに対し国は、東京高裁判決を不服とし上告受理申立てを行ったわけだが、上告受理申立て理由として、①本件株式に係る法59条1項の「その時における価額」は、本件株式譲渡直前に納税者が本件株式を有している状態に基づいて判断すべきこと、②評価通達の文言を根拠に、本件株式の「その時における価額」を本件株式譲渡後の事情に基づいて評価・判断した原判決は誤りであること、③原判決の判断は、最高裁判所の判例及び高等裁判所の判例と相反する判断であり、法令の解釈に関する重要な事項に誤りがあること、を挙げている。

被上告人は、下級審では、上記の争点のみならず、「買主の事情も考慮すべき」「利害相反する第三者間で成立した売買価額は、税務上、原則として正常な取引条件で成立した適正価額(時価)と取り扱われる」などと主張していたこともあり、反論の内容が注目される。

(情報提供:株式会社ロータス21)