- 土地建物を一括譲渡した場合の譲渡対価区分、仕入時の固定資産税評価額の比率による案分方法を不合理と判断した高裁判決が確定。
- この親会社の事案と同様に譲渡対価の区分を否認された子会社の事案も訴訟に。親会社に係る判決内容が踏襲されるか否かが焦点。
土地建物を一括して譲渡した場合には、その譲渡対価を建物部分(課税資産)と土地部分(非課税資産)に区分する必要が生じる。この譲渡対価の区分をめぐりここ最近問題となっているのは、仕入れた中古物件にリフォーム工事を行ったうえで顧客に販売するビジネスモデルである。東京地裁令和5年5月25日判決及び東京高裁令和6年5月30日判決では、売買契約書に記載された価額比率(過去に仕入れた個々の戸建住宅物件の固定資産税評価額の比率を採用したもの)が建物に係るリフォームを反映しておらず不合理であり「課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないとき」(消令45③)に該当するとした課税処分を適法とする判決が下されている。この控訴審判決は、最高裁の上告不受理により確定している(令和7年5月9日決定)。
本誌取材によると、この事案における納税者の子会社も親会社と同様に、土地建物の一括譲渡に係る固定資産税評価額による按分方法が否認され、この課税処分の可否に関する裁決が下されていたことが明らかとなった。審判所は、譲渡対価(売買代金)の区分に物件仕入時における年度の固定資産税評価額の比率で按分した請求人の算出方法はリフォームにより高めた中古物件の交換価値を建物の対価の額に適切に反映したものということはできず、販売代金の総額に占める建物(課税資産)の対価の額が土地(非課税資産)の対価の額に比べて著しく過少に区分されていたものといえると指摘し、「合理的に区分されていないとき」(消令45③)に該当すると判断した。そのうえで審判所は、税務署が採用した建物及び土地の売上原価の比率による按分方法についてリフォームによる交換価値の増加が建物及び土地の代金額に適切に反映されないという問題を解決するもので合理的であるとして審査請求を棄却している(名裁(諸)令6第7号)。これを不服とした子会社は、名古屋地裁に課税処分の取り消しを求める訴訟を提起していることが判明している。親会社に対する課税処分は東京地裁及び東京高裁が適法とする判決を下しているところ、この判断が名古屋地裁においても踏襲されるかが注目されそうだ。