• 被相続人の配偶者名義の口座で管理運用されていた有価証券等が相続財産に含まれるか否かが争われた税務訴訟で納税者側敗訴(東京地裁平成30年4月24日判決)。
  • 裁判所、配偶者名義有価証券等の購入原資として、被相続人名義の預金口座から資金の大半が流入していることなどから、被相続人の相続財産に含まれると判断。

本件で問題となったのは、被相続人の配偶者名義の口座で管理されていた有価証券等(総額約1億5千万円)が被相続人の相続財産に含まれるか否かという点である。

事実関係をみると、税理士であった被相続人の長女で、自らも税理士として被相続人の経営する事務所に勤務していた原告は、配偶者名義有価証券等のうち、その45%相当額を相続財産として申告していた。これに対し税務署は、その全部が被相続人の資産を原資として形成されたものとして配偶者名義有価証券等の全額を相続財産とする課税処分を行った。これを不服とした原告は、被相続人から原告に支払われた給与を原資として形成されたものであることなどから配偶者名義有価証券等のうち少なくともその2分の1に相当する部分は原告に帰属し、相続財産に含まれない旨を主張して課税処分の取り消しを求めた。

裁判所はまず、相続財産の法律上の帰属はその財産の名義のみではなく、その財産の取得が誰の出損によるものか、被相続人とその財産の名義人及び管理・運用者との関係、名義人がその名義を有することになった経緯などの各事情を総合考慮して認定判断することが相当であるとした。

そして本件について裁判所は、被相続人は自らの事務所で営んでいた税理士業の収入を家族4名の各名義を利用して資産の管理運用を行ってきたものであり、配偶者名義証券口座もそのなかで開設されたものであると認定。また、配偶者名義有価証券等の購入原資として、配偶者名義の預金口座又は証券口座に対して被相続人名義預金口座からその大半を占める資金が流入していることなどから、購入原資となった額はその全部が被相続人に帰属するものであったと推認できるとした。さらに、原告名義預金口座からは配偶者名義有価証券等の購入原資となるような資金流入は認められず、原告が被相続人から受けた給与及びその運用収益は既に原告名義の資産として形成されているものと認められるとした。以上の点などを踏まえ裁判所は、配偶者名義有価証券等はその全部が被相続人に帰属する(相続財産に含まれる)と判断したうえで、課税処分は適法であると結論付けた。

(情報提供:株式会社ロータス21)