• マンション管理組合による共用部分(屋上)の賃貸収入の課税関係めぐり、控訴審もマンション管理組合に対する法人税課税を認める(平成30年10月31日判決)。
  • 東京高裁、アンテナ設置収入は法人税の課税対象となる収益事業に該当すると判断。収益事業には当たらないとしたマンション管理組合の主張を斥ける。

本件で問題となっていたのは、マンションの区分所有者全員で構成される団体であるマンション管理組合(以下「納税者」)がマンション共用部分(屋上)をアンテナ一式に要するスペースとして携帯電話会社に賃貸した収入の課税上の取扱いである。

争点の1つとなったのは、マンション共用部分の一部の賃貸が納税者の行う収益事業に当たり、納税者の収益事業から生じた所得といえるか否かという点である。この点に関し納税者は、共用部分の賃料は各区分所有者に帰属するため、この各区分所有者(帰属者)に所得税等が課されるべきであるから、納税者には法人税を課すべきではないと主張していた。

これに対し原審の東京地裁は、本件賃貸は権利能力のない社団である納税者が団体として行う活動としての実質を有するものといえるから、法人税法上、納税者が不動産貸付業という収益事業を行っていると認めるのが相当であるとした。また、納税者が主体となって行われた収益事業から生じた収益である本件賃貸収入について、それが納税者の構成員から分離されて、納税者の団体としての活動目的に沿うよう管理・保管されていることも勘案すれば、納税者の所得を構成するという判断を示したうえで、納税者が本件賃貸収入による所得について法人税の納付義務を負うことになると結論付けていた。

地裁判決を不服とした納税者は、控訴審のなかで、仮に本件賃貸収入が納税者の収入と把握されるとしても、税務上の事業は一定規模以上の収入を想定しているから屋上のごく一部をアンテナ設置場所に賃貸している本件賃貸収入は事業的規模とはほど遠いと指摘し、収益事業には当たらないという主張を展開した。これに対し東京高裁は、店舗の一画を他の者に継続して使用させるいわゆるケース貸しや広告等のために建物の屋上や壁面等を他の者に使用させる行為も収益事業に含まれるとされていること(法基通15-1-17)や本件賃貸借契約によりアンテナを設置している限り継続して賃料収入が得られることなどを踏まえれば、本件賃貸は収益事業に該当すると判断したうえで、納税者の控訴を棄却した。

(情報提供:株式会社ロータス21)