• 請求人が法定申告期限までに納税申告書を提出しなかったことに「隠蔽又は仮装」に該当する行為があったか否かが争われた裁決(令和2年2月13日)。
  • 審判所、請求人が複数の税理士に税務代理を依頼するなど、法定申告期限までに申告しないことを意図し、外部からもうかがい得る特段の行動をとったとは認めず。

本事案は、有限会社である請求人が法定申告期限までに納税申告書を提出しなかったことに「隠蔽又は仮装」に該当する行為があったか否かが争われたもの。請求人は税務調査を受けて法人税及び消費税等の期限後申告をしたが、原処分庁により重加算税の各賦課決定処分を受けていた。これに対して請求人は、不十分ながらも領収書等の書類を整理保存していたが、会計帳簿の作成方法が分からなかったこと及び何名かの税理士に申告相談をしたがいずれも断られたことにより会計帳簿を作成することができず、納付すべき税額が生じていたことを明確に認識していなかったなどと主張し、処分の一部取消しを求めた。

審判所は、重加算税を課すためには、無申告行為とは別に、隠蔽、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた無申告行為を要するものであるとした上で、納税者が当初から法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当であるとしている。

その上で本件についてみると、請求人の前代表者は、請求人の税務代理を税理士の元へ書類を持参の上で申告書の作成を依頼したものの、書類が不足していたことから依頼を留保され、その後も前代表者の妻が何名かの税理士に税務代理を依頼するも、請求人が無申告であったことや過去5年分の書類が保存されていないことなどから依頼を断られていたことなどを指摘。審判所は、請求人が長年にわたり会計帳簿を作成せず、申告をしなかったことは認められるものの、請求人は漫然と無申告の状態を放置していたわけではなく、むしろ申告をしようとしていたことがうかがえるとの判断を示した。

したがって、請求人が税を免れようとする確定的な意思に基づいて無申告を貫いていたと評価することはできず、法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできないとして、審判所は処分の一部を取り消した。

(情報提供:株式会社ロータス21)