• 日本居住者の金融口座情報205万8,777件を86か国・地域の外国税務当局から受領。口座残高は約10兆円にのぼる。
 国税庁が2月2日に公表した「令和元事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」によると、CRS情報の自動的情報交換では、日本居住者の金融口座情報205万8,777件を86か国・地域の外国税務当局から受領したことがわかった。口座残高が約10兆円にのぼることも初めて明らかになった。アジア・大洋州が163万421件と最も多く、次いで欧州・NIS諸国が29万9,313件、北米・中南米が9万6,288件、中東・アフリカが3万2,755件となっている。一方、国税庁は海外居住者の金融口座情報47万3,699件(口座残高約4兆円)を65か国・地域に提供している。
 CRS情報に基づく自動的情報交換は、金融機関が保有する非居住者の口座情報(氏名・住所、居住地、口座残高、利子、配当など)を各国の税務当局間で自動的に交換するもの。国税庁は、受領した金融口座情報を国外送金等調書、国外財産調書、財産債務調書の各調書や独自に収集した情報と併せて分析したうえで、課税・徴収分野で活用している。例えば、受領したCRS情報から調査法人の海外子会社の海外預金口座を把握し、海外子会社合算税制の誤りなどが判明し、法人税の申告漏れを把握した事例などがあるという。
 なお、令和元事務年度からは新規口座及び個人の既存高額口座(口座残高1億円超)だけでなく、個人既存低額口座及び法人既存口座も対象となっている。

 

【表】CRS情報の自動的情報交換の活用例

○受領したCRS情報から、被相続人と相続人3名のジョイント口座がY国に存在することを把握したが、相続税申告書に当該預金口座の記載がなく、相続税の申告漏れが想定されたため、調査に着手した。調査の結果、相続人Bは当該ジョイント口座が相続財産であることを認識していたにもかかわらず、その存在を残り2名の相続人に伝えず、相続財産から意図的に除外していたことが判明し、相続税の申告漏れを把握した。
○受領したCRS情報から、被相続人DがX国の金融機関に口座を保有していることを把握したが、相続人Eの相続税申告書に当該預金口座の記載がなく、相続税の申告漏れが想定された。また、CRS情報は年末時点での口座残高であり、“相続開始時点”での残高を把握する必要があったものの、残高については日本国内では十分な情報を得ることができなかった。そこで、Dの相続開始時点でのX国金融機関口座の預金残高を示す資料の提供を、X国税務当局に対し要請・入手した結果、Dの相続開始時の預金残高が判明し、Eの相続税申告漏れを把握した。

 

(情報提供:株式会社ロータス21)