• 請求人に対して行った差置送達について、歯科診療中であることを理由に対応できないとしたことは、受領を拒否する「正当な理由」には該当しないと判断した事例。
  • 審判所、請求人が診療中であっても送達場所におり、税務職員の来訪を認識していた場合には差置送達を行うことができると判断。

本件は、原処分を行う際に、税務職員が請求人に対して行った通知書の差置送達について、歯科医師である請求人が診療中であることを理由に対応できないとして通知書を受け取らなかったことが、受領を拒否する「正当な理由」に該当するか否かが争われた事案である。請求人は、税務職員が通知書を持参して突然歯科医院を訪問した際には診療中であったため対応することができなかったものであるから、本件差置送達は通則法12条に規定する要件のいずれにも該当せず、受領を拒否したことは「正当な理由」に該当すると主張していた。

審判所は、差置送達は①大量かつ反復して行われる租税の賦課・徴収に関する処分に関する書類を簡易迅速に送達し処分の効力を生じさせる必要があることや、②送達を受けるべき者等が不在又は正当な理由なく書類の受領を拒んだ場合に送達できないとしてしまうと、不当に納税義務を免れさせることになるため、合理的な送達方法であることから認められた制度であるとした。その上で、税務職員が通知書を持参したのは歯科医院の診療時間中であり、請求人は歯科医院にいたことが認められるため、書類の送達を受けるべき者である請求人が通則法12条5項2号前段の「送付すべき場所にいない場合」には該当しないと判断した。併せて、税務職員に対し、歯科医院の従業員を介して、診療中につき書類の受領に対応することができない旨を伝えていることからすると、請求人は税務職員の来訪を認識しつつも、診療中であることを理由に通知書の受領を拒んだものといえるとした。

また、審判所は、差置送達の制度が認められた趣旨に照らしてみても、送達を実施するために職員が診療中の患者の診療が終了するまで待機することや、後日出直して交付送達を試みることまでを通則法が求めていると解することは困難であると指摘し、差置送達を行うことができると解するのが相当であるとの判断を示した。したがって、審判所は、診療中であるという事情は通則法12条5項2号の「正当な理由」に該当しないとして、請求人の主張を斥けた。

(情報提供:株式会社ロータス21)