• 東京地裁(岩田真吾裁判官)は令和3年3月23日、違法に税金を免れる手法を適法な節税であると説明して顧客を勧誘したことに重大な過失があったとし、節税スキームをうたい顧客を勧誘した会社の代表取締役への損害賠償請求を容認。
  • ただし原告にも節税スキームが違法なものか細心の注意を払う必要があるとし、過失割合を5割と認定。

本件は、節税スキームをうたい脱税を指南していたとして令和2年11月に名古屋国税局が法人税法等違反で名古屋地方検察庁に告発した会社の顧客(原告)が、同社の代表取締役(被告)に1,482万6,240円等の損害賠償請求を行っていた事案である。会社は顧客に現金を渡し、その現金を同社に振り込ませ、その資金を香港等の海外関連会社を経由し、ケイマン等のタックスヘイブン国にて課税処理(非課税化)を済ませた後で顧客に返金。その後、顧客が会社の発行する請求書に従って税務申告することで、その請求書に記載された金額が経費で落ちるという違法な脱税スキームを考案していた。仮想通貨取引等により多額の利益を得ていた原告は、会社の従業員から同社が提供する節税コンサルティング業務について、それが適法であるなどと説明を受けて勧誘され、その後、自らに課される税金を減額するため同社にコンサルティング業務を依頼していた。

裁判所は、会社は実際には顧客に課されるべき税金を減額する効果のない手法を用いて顧客を勧誘しコンサルティング料を得るという事業を行っていたのであるから、同社の従業員は会社の事業の一環として原告に本件スキームを勧誘するなどしたといえると指摘。会社の代表取締役である被告には、従業員が顧客に対して違法に税金を免れる手法を適法な節税であると説明して勧誘したことにつき、少なくとも重大な過失があったというべきであると判断した。

その上で裁判所は、原告は節税スキームが違法に税金を免れる手法であると認識していたとまで認めることはできないとしたものの、税金を減額させる手法が違法なものでないかは細心の注意を払うべきであると指摘。節税スキームは、原告が8,000万円を負担していないにもかかわらず、8,000万円を経費として計上するというものであり、いかにも不自然不合理な内容の手法であることからすれば、原告の過失割合を5割として過失相殺するのが相当であると判断。裁判所は、支払ったコンサルティング料と弁護士費用相当額の合計1,482万6,240円の5割である741万3,120円及び遅延損害金の支払いを請求することを認めた。

(情報提供:株式会社ロータス21)