• 相続した土地の土壌汚染の浄化・改善費用に相当する金額を控除できるか争われた裁決。
  • 審判所は、土壌汚染の控除費用は法令により汚染除去の措置を講ずる義務が生じ、除去費用が確実である場合に限定する理由はないと判断し、原処分の全部を取り消し(令和3年12月1日公表裁決)。

本件は、請求人が相続した土地は土壌汚染地であるとして、土地の評価に際して浄化・改善費用に相当する金額を控除して相続税の申告をしたところ、原処分庁が土壌汚染対策法に規定する汚染の除去等の措置を講ずることが必要な区域に指定がされていないため、浄化・改善費用の負担が確実に発生するとはいえないとして更正処分等を行ったもの。相続税などの財産評価において、土壌汚染地の評価額については、土壌汚染がないものとした場合の評価額から、土壌汚染の浄化・改善費用に相当する金額等を控除して評価する旨及び控除する浄化・改善費用相当額は見積額の80%相当額とする旨が国税庁の公表した「土壌汚染地の評価等の考え方について(情報)」(平成16年7月5日公表)で明らかにされているが、本件では浄化・改善費用相当額(工事見積額の80%相当額)を控除できるかどうかが争点となっている。

審判所は、本件各土地の評価に当たっては、土壌汚染がないものとした場合の評価額から、浄化・改善費用相当額を控除することができるか否かは評価通達に特に定めはないものの、国税庁の「土壌汚染地の評価等の考え方について(情報)」のとおり、課税実務においては、浄化・改善費用相当額(工事見積額の80%相当額)を控除して評価する取扱いが認められているとした。

その上で審判所は、各土地には相続開始日においていずれも土壌汚染対策法の基準を超える特定有害物質が地中に含有されていたことが認められることから、各土地の評価に当たり、浄化・改善費用相当額を考慮すべきとの判断を示した。

原処分庁は、浄化・改善費用相当額の控除が認められるためには、法令上、汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じている必要があり、本件の場合は各土地が土壌汚染対策法の要措置区域に存するか否かで判断することになると主張したが、審判所は、相続財産の価額は財産の客観的な交換価値であると解されることから、土壌汚染が土地の価格形成に影響を及ぼす場合を、法令により汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じ、その除却等の費用が発生することが確実である場合に限定する理由はないとして斥けた。

(情報提供:株式会社ロータス21)