• 政府税制調査会の専門家会合、相続時精算課税の使い勝手向上のほか、暦年課税による生前贈与財産の加算期間を見直す方針。教育資金の一括贈与など、各種の贈与税の非課税措置も見直しの対象。
  • 中期的課題である法定相続分課税方式の見直しは遺産取得課税方式への変更が望ましいとの意見多数。

政府税制調査会に設置された「相続税・贈与税に関する専門家会合」(座長:増井良啓東京大学大学院法学政治学研究科教授)は10月5日、資産移転の時期に中立的な税制の構築に向けた相続税・贈与税のあり方に関する検討に着手した。増井座長は、中期的な課題として、現行の法定相続分課税方式の見直しを含め、相続税・贈与税のあり方の方向性を挙げるとともに、当面の課題として、①現行の課税方式の下、相続時精算課税の使い勝手の向上、②暦年課税による生前贈与財産の加算期間の見直し、③各種の贈与税の非課税措置の見直しの3点を挙げた。これら当面の課題については令和5年度税制改正で見直しの検討が行われることになる。専門家会合は11月上旬にも報告書をとりまとめる予定だ。

中里政府税制調査会会長が明言しているとおり、暦年課税の廃止については当面は検討しない方針。実務家サイドから注目が集まっていたのは、生前贈与財産の加算期間の見直しがあるか否かだ。現行の加算の対象期間は「3年」とされており、加算の対象期間を「5年」「7年」などに延長することになれば、現行制度よりも「資産移転の時期の選択に中立的な税制」により近づくことになる。専門家会合で日本税理士会連合会の神津会長も加算期間を3年よりも伸長すべきと述べるなど、加算期間を延長する見直しの可能性が高まっている。

また、富裕層を優遇し、格差の是正に逆行する制度との批判の声がある「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」や「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」についても見直す方向となっている。令和3年度の新規契約数は、教育資金一括贈与は8,962件と当初の6万7千件超に比べて大幅に減少。結婚・子育て資金贈与はわずか153件にすぎない。適用期限が令和5年3月31日で切れることから、令和5年度税制改正において、制度の存廃を含め何らかの見直しが行われることは確実な情勢となっている。

なお、10月5日の専門家会合では、中期的課題として法定相続分課税方式の見直しについて検討が行われており、遺産取得課税方式への見直しが望ましいとの意見が相次いでいる。

(情報提供:株式会社ロータス21)