• 審判所、合資会社の社員が死亡退社したことに伴って発生した持分払戻請求権の価額のうち、出資した金額を超える部分はみなし配当に該当するとして、配当とみなされる金額はないと主張する請求人らを斥ける(令和4年6月2日裁決)。

本事案は、合資会社の社員(被相続人)が死亡退社したことに伴い発生した持分払戻請求権の価額のうち、当該社員の出資額を超える金額が、本件被相続人において、みなし配当となるか否かが争われたものである。原処分庁は、被相続人の出資額を超える金額は、被相続人に対する配当とみなされるとして所得税の更正処分を行った。これに対し、相続人である請求人ら4名は、持分払戻請求権の払戻金額は零円とすることを、本件合資会社の総社員の同意により確定しており、被相続人の死亡退社に伴って請求人らは金銭その他の資産の交付を受けていないから、所得税法25条の規定により配当とみなされる金額はないと主張し、原処分の全部の取消しを求めていた。

所得税法では、持分会社の社員が死亡した場合には、その社員が有していた社員権(出資)が死亡と同時に持分払戻請求権に転換し、その転換した時点で持分払戻請求権の価額のうち出資を超える部分が、同法25条1項の規定によりみなし配当として当該死亡社員の所得を構成するものとされている。それを踏まえて審判所は、被相続人は死亡と同時に払戻請求権を取得したのであるから、被相続人の出資額が払戻請求権に転換した時点(相続開始日)において、払戻請求権の価額相当額の経済的価値が被相続人にもたらされたということができ、所得税法25条の「金銭その他の資産の交付を受けた場合」に該当すると認められるとした。

その上で審判所は、会社法608条1項は、持分会社はその社員が死亡した場合において、当該社員の相続人が持分を継承する旨を定款で定めることができると規定しており、持分の払戻を受けない場合には定款の定めが必要であるところ、本件合資会社の定款には死亡した社員の相続人が当該社員の持分を承継する旨の定めはなく、総社員の同意の後に払戻請求権に価値があることを前提とした遺産分割協議書が作成されるなど、内容に矛盾があると指摘した。そして、仮に総社員の同意が払戻金額を零円とする意思決定を示すものだとしても、被相続人が相続開始日に払戻請求権を取得した事実は変わりないことから、審判所は、払戻請求権の価額のうち、出資額を超える金額はみなし配当と認められると判断。請求人らの主張を斥けた。

(情報提供:株式会社ロータス21)