• 割り当てられた米国法人の株式が剰余金の配当に該当するかが争われた裁決(名裁(所)令3第52号)。
  • 米国歳入法355条等に基づく事業分割は、日本の会社法上の分割に該当せず。株式の割当ては剰余金の配当に該当。請求人の請求を棄却。

本件は、請求人に割り当てられた米国法人の株式が剰余金の配当に該当するか否かが争われた裁決である。請求人は、社員持ち株制度により米国法人A社の株式を保有していたが、同社が事業分割したことによりB社の株式を取得したもの。原処分庁は、B社株式は課税の対象となる剰余金の配当に該当するとしたが、請求人は、B社の株式は基準日時点のA社の株主に対し、A社の利益剰余金だけでなく、資本剰余金をも原資として割り当てられたものであるから、本件株式は、剰余金の配当には該当しないなどと主張した。

審判所は、法人税法にいう分割は日本の会社法に準拠して行われる分割に限られず、外国の法令に準拠して行われる法律行為であっても、会社法上の分割に相当する法的効果を具備し、日本の会社法上の分割に相当するものと認められる場合には、法人税法上の分割に該当するものとして取り扱って差し支えないものとの見解を示した。

その上で、日本の会社法上の分割は、分割の対象とされた分割会社の権利義務は事業譲渡の場合のように個別に承継又は移転されるのではなく、吸収分割契約又は新設分割契約により、承継会社又は新設会社に一括して承認されるという一般承継の法的効果が付与されることになるとしたが、一方で、本件事業分割に関しては、米国歳入法355条及び368条(a)(1)(D)に適合する組織再編成であり、米国における組織再編成では、同法に定める税制適格要件に適合させることを前提に、ある法人が他の法人に資産を譲渡し、その対価として資産取得法人の株式等の交付を受け、両者の支配従属関係を成立させた上で、資産取得法人(被支配法人)の株式等が資産譲渡法人(分配法人)の株主に分配されるという類型の分割であると指摘。審判所は、本件事業分割は日本の会社法上の分割に相当する法的効果を具備するものとはいえず、法人税法2条12号の9に規定する分割型分割には該当しないとの判断を示した。また、A社による本件株式の割当てに当たっては、本件事業分割に伴いA社から社名変更したC社の連結株主資本等変動計算書上、本件事業分割によって利益剰余金のみが減少しており、資本剰余金の減少はないことから、本件株式の割当ては剰余金の配当に該当するとの判断を示し、請求人の請求を棄却した。

(情報提供:株式会社ロータス21)