• 相続で取得した不動産の持分の評価額の算定において、評価通達の定める評価方法によっては財産の時価を適切に評価できない特別の事情があるか争われた裁決。
  • 国税不服審判所、各不動産の共有者が多数であることなどは、市場性の低下の影響を免れることができない事情とはいえず、請求人の主張を斥けた(大裁(諸)令4第6号)。

本件は、請求人らが、相続税の申告後、相続により取得した不動産の持分の評価額に誤りがあったとして不動産鑑定士による鑑定評価書に基づき更正の請求をしたところ、原処分庁が、相続税の申告に係る当該持分の財産評価基本通達に基づく評価額が時価を上回るとは認められないとして、更正をすべき理由がない旨の各通知処分を行ったことから、これを不服とした請求人らがその全部の取消しを求めた事案である。

請求人らは、相続により取得した区分所有建物及び敷地権の持分について、①テナント運営を行うことを前提に、店舗配置を自由に変更することを可能にするため、相互に関係を有しない多数の者による共有状態で権利関係が錯綜しており市場性が低下している、②各建物はテナント運営を目的とし、各不動産持分に基づいて自ら直接使用することができない上、各不動産持分に係る管理料が高額で実質的な賃料収入の確保が難しいという事情があることから、評価通達の定める評価方法によっては財産の時価を適切に評価できない特別の事情があるなどと主張した。

審判所は、前記①の請求人の主張に対して、共有状態にあることが各不動産の持分について評価通達の定める方法によっては財産の時価を適切に評価できない特別の事情に当たるというためには、例えば、その取得時において分割禁止の合意が存在するなどの事情により共有物の分割請求をすることができず、かつ、他の共有者への持分の売却や他の共有者との共同売却も困難であるなど、その価額や評価が取得時において持分であることによる市場性の低下の影響を受けることを免れることのできない事情が存することを要するというべきであると指摘。しかし、各不動産の共有者が相互に関係を有しないことや各不動産の共有者が多数であることは、市場性の低下の影響を免れることができない事情ということはできないため、特別の事情があるとはいえないとの判断を示し、請求人の主張を斥けた。

また、②の請求人の主張に対して審判所は、各不動産の収益価格の算定の基礎となる賃料が低廉であることをもって、特別の事情があるということはできないとした。

(情報提供:株式会社ロータス21)