• 東京地裁、遺留分減殺請求を受けて価額弁償金を支払ったことによる相続税の更正の請求を、弁償すべき額が確定したことを知った日の翌日から4か月以内になされていないとして認めず(令和5年6月29日判決)。

被相続人である原告の母は平成22年4月に死亡したが、それ以前の平成9年に、公正証書遺言により、三男である原告と原告の長男I氏に対して、遺産の一部を相続させ、又は遺贈していた。原告ら(相続人ら)は平成23年2月に相続税の申告をしたが、原告の兄(長男)と二男の代襲相続人である甥が、遺留分減殺請求権を行使し、相続財産である不動産の所有権の一部移転登記手続などを求める訴訟を提起した。

その後、平成28年4月に、原告と原告の長男I氏が、原告の兄(長男)らに対して価額弁償金を支払うことで裁判上の和解が成立し、原告らは、令和2年5月までに当該価額弁償金を支払った。また、原告の弟(四男)も遺留分減殺請求権を行使しており、四男の死後、その子に対して令和2年8月に解決金を支払うことで合意し、当該解決金を支払った。

原告は令和2年9月に、これらの支払いにより、当初の申告に係る課税価格及び相続税額が過大になったなどとして、更正の請求をしたが、処分行政庁は、本件価額弁償金に係る部分については、「弁償すべき額が確定した」ことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求をしていないから更正をすべき理由がないとして更正処分を行った。

これに対し原告は、本件価額弁償金は現実にこれを支払うことによって「弁償すべき額が確定」すると主張した。

東京地裁は、「相続税法32条3号は、相続税について申告書を提出した者は、遺留分減殺請求に基づき『弁償すべき額が確定した』ことにより当初申告に係る課税価格及び相続税額が過大となったときは、申告書の提出者がこれを知った日の翌日から4か月以内であれば、更正の請求をすることができる旨規定する」とした上で、本件においては、裁判上の和解が成立することで、原告が弁償すべき本件価額弁償の額が確定したと解するのが相続税法32条3号の文言に沿うとの判断を下した。

遺留分減殺請求手続は、令和元年の民法改正により遺留分侵害額請求手続に変更となったが、相続税法32条3号は従来と変わらない内容であるため、更正の請求の期限については、弁償金の支払い前であっても裁判上の和解が成立した時点から起算すべきこととなる点に留意したい。

(情報提供:株式会社ロータス21)