• 海外のカジノで得た所得について、一時所得に係る「収入すべき金額」がいつ確定するかなどが争われた裁決(東裁(所)令4第17号)。
  • 審判所、チップを現金に交換しなくても、予想が的中してチップを受け取った時点で収入となるべき権利が確定。請求人の請求を棄却。

本件は、原処分庁が請求人に海外のカジノで得た一時所得があるとして所得税等の更正処分等を行ったことに対し、請求人が一時所得の金額に誤りがあるとして原処分の一部の取消しを求めた事案である。バカラでの所得について、一時所得に係る「収入すべき金額」がいつ確定するかなどが争点となっている。

請求人は、海外のカジノにおいて賭博を目的としたバカラ等のゲームにより収入を得たが、①ゲームはカジノ会社との間で締結したプログラム契約に基づきカジノ会社から資金を借り入れて行っているため、予想が的中して受け取ったチップは債務を返済した後でなければ換金できないこと、②一日当たりの換金できる金額に制限があったことなどから、ゲームによる一時所得に係る「収入すべき金額」は、プログラム終了時点において、予想を的中させて受け取ったチップを換金して現実に収入を得ることができる金額であるなどと主張した。

審判所は、請求人は各カジノ会社から借入れをしていたことから、各クレジット枠契約書に係る各債務を返済しなければ、予想が的中したゲームにおいて受け取ったチップを直ちに現金に交換することはできなかったものの、チップを受け取った時点で、チップを次のゲームに賭ける原資として使用するのか、各プログラムを終了させて各債務及びチップを含む保有するチップの清算をするのかを任意に決定することができたと指摘。したがって、審判所は、予想が的中してチップを受け取った時点でチップの額面金額に相当する経済的価値を得るための権利行使が可能となったことから、その時点において収入となるべき権利が確定したといえると判断した。

また、請求人は、予想を外したゲームで賭けたチップの額面金額に相当する金額は、「その収入を得るために支出した金額」(所法34条②)に該当すると主張したが、この点について審判所は、一時所得の金額の計算上、一時所得に係る収入及び支出については、収入を生じた行為又は原因ごとに個別対応的に計算するものとされているところ、請求人が予想を的中させて受け取ったチップと個別対応する支出は、予想が的中したゲームで賭けたチップに限られるとの判断を示した。

(情報提供:株式会社ロータス21)