• 役員給与の返還後、更正の請求により源泉所得税の還付を受けることができるか否か争われた裁決(仙裁(所)令4第13号)。
  • 審判所、役員給与の返還に伴って正当に徴収された所得税等の額が減少した場合は、その減少後の正当に徴収された所得税等の額を超える金額を算出所得税額から控除し又は還付することはできないと判断。

本件は、法人の代表取締役であった請求人が法人に役員報酬等の一部を返還した後、返還した役員報酬等に係る源泉徴収税額が過大であるとして所得税等の更正の請求をしたが、原処分庁が納付すべき税額が過大であったとは認められないなどとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったことから、請求人がその処分の全部の取消しを求めた事案である。

審判所は、最高裁判決を引用し、所得税法120条1項5号(現4号)にいう「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」とは、所得税法の源泉徴収の規定に基づき正当に徴収をされた又はされるべき所得税の額を意味するものであり、給与その他の所得についてその支払者がした所得税の源泉徴収に誤りがある場合に、その受給者が、所得税の確定申告の手続において、支払者が誤って徴収した金額を算出所得税額から控除し又は誤徴収額の全部もしくは一部の還付を受けることはできないと解するのが相当であるとした(最高裁平成4年2月18日第三小法廷判決)。

その上で、本件では、役員給与の返還に伴い源泉徴収の規定により正当に徴収された又はされるべき所得税等の額も減少することになると指摘。役員給与の返還後においては、各源泉所得税の額は「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」とは認められず、請求人は、各更正の請求において、各源泉所得税の額のうち、「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」を超える金額を算出所得税額から控除し、又は還付できないとの判断を示した。

なお、原処分庁は、請求人の源泉徴収による所得税等の額は、法人が再計算するものであり、原処分庁が再計算するものではないとしたが、審判所は、請求人が更正の請求に関して提出した資料から正当に徴収されるべき所得税等の額が計算できる場合には、その計算をした所得税等の額を基に確定申告書に記載された納付すべき税額が過大となっているかを判断することになると指摘。本件では、平成28年分の所得税等の納付すべき税額については、確定申告書に記載された納付すべき税額が過大になっていることから、原処分の一部を取り消した。

(情報提供:株式会社ロータス21)