• 東京地裁、投資により生じた損益の雑所得の総収入金額に計上すべき時期が争われた事案で、投資商品の償還期限に損失が生じることがあったとしても、取引日ごとに権利が確定していたと判断(令和5年10月27日判決)。

原告は、本件投資損益は日々発生しているものの、本件投資商品の償還期限(終期)は令和7年12月31日とされていること及び一定の損失が生じた月は取引を停止することがあるとされていることからすれば、本件投資商品は、投資信託的性質を有しており、その終期において損失が生じる可能性があるとして、本件投資損益が確定し、雑所得の総収入金額に計上すべき時期は令和7年12月31日であると主張していた。

東京地裁は、まず、収入の原因となる権利の確定時期について、「現実の収入がなくても、収入となるべき権利が発生した後、これを法律上行使することができるようになり、権利実現の可能性を客観的に認識することができる状態になったときは、収入となるべき権利が確定したものというべき」との考えを示した。

その上で、本件については、①本件ステイトメントの記載によれば、本件投資損益は、「Date」(取引日付)欄に記載された年月日ごとに発生していた、また、原告は3日から4日ごとに本件運用口座のウェブページにログインして投資履歴を確認しており、好きなタイミングで本件運用口座から数回にわたり送金していたことなどから、②本件投資商品の償還期限にかかわらず、いつでも自由に出金することができる状態にあり、かつ、③その権利実現の可能性を客観的に認識することができる状態にあり、実際にも認識していたと指摘し、「Date」欄に記載された年月日において収入の原因となる権利が確定したとの判断を下した。

また、原告の主張に対しては、仮に、その後、本件運用口座における本件投資を継続した結果、本件投資商品の終期(償還期限)において損失が生じることがあったとしても、それは、収入の原因となる権利が確定した本件投資収益を本件運用口座から出金することなく、そのまま再投資したことの結果というべきと指摘。さらに、本件運用口座からの出金のうち一部が元本の引き出しであったとしても、また、令和3年9月以降、証券取引等監視委員会の申立てを受けて東京地方裁判所が投資運用会社らに対し金融商品取引法29条に違反する行為の禁止及び停止を命じたとの事実を勘案しても、権利の確定は左右されるものではないとして、その主張を斥けている。

(情報提供:株式会社ロータス21)