• 政府税調、翁百合新会長のもと、中長期的な税制のあり方について議論をスタート。会合では、配偶者控除をめぐる課題の解消は急務であるとの意見も。
  • 翁会長、経済の新たなステージにふさわしい税制の議論を考え、増減税など結論ありきではなく、実態やデータなどを見ながら議論を行う方針を示す。

政府の税制調査会は5月13日に総会を開催し、翁百合氏(日本総研理事長)が新会長に就任してから初めて本格的な議論を交わした。岸田内閣総理大臣からの諮問では「デフレからの完全脱却と経済の新たなステージへの移⾏を実現するとの基本的考え⽅の下、経済成⻑と財政健全化の両⽴を図るとともに、少⼦⾼齢化、グローバル化、デジタル化等の経済社会の構造変化に対応したこれからの税制のあり⽅について審議を求める。」とされており、政府税調では、昨年6月の中期答申も踏まえた「公正で活力ある社会の実現」に向けた議論を行っていく予定だ。

会合では、「経済社会の構造変化等について」の様々な意見や論点が各委員から提起された。令和6年度税制改正大綱の基本的考え方で示された、税制の効果を見極めるEBPM(証拠に基づく政策立案)について、最重要課題ではないかとの指摘が多くあったほか、働き方に中立的な税制については見直すべきという声が相次いだ。特に、配偶者控除をめぐる課題の解消は急務であるとして、委員からは「103万円の壁は実質的に消滅したとされているが、就業調整しているという実態がある。制度上の壁をなくして終わりではない」と議論の必要性が提起された。

このほか、日本銀行が3月にマイナス金利政策を解除したことを受けて、「『金利のある世界』に入ることを肝に銘じた上で、財政健全化と経済成長をバランスよく両立できるようタックスミックスの在り方を模索するべき」といった意見もあった。

総会終了後の記者会見で翁会長は、「賃金が低迷していたところが少し変わり始めている。経済の新たなステージへの移行を実現しようとしているこの機に、ふさわしい税制の議論を考えていきたい」と述べた。また、昨年6月の中期答申に盛り込まれた「公正で活力ある社会の実現」は重要であると強調した上で、「増減税など、結論ありきの議論をするのではなく、経済社会の実態やデータなどを丁寧に見ながら議論を行い、私たちの世代、そして子供たちの世代にも希望が持てるような社会にするための税制を考えていきたい」と話した。

(情報提供:株式会社ロータス21)