- 帳簿を作成しなかったこと等が隠蔽・仮装行為に該当するか争われた事案(名裁(所・諸)令6第8号)。
- 審判所、帳簿を作成しなかった行為自体、外部との接点を有しない内部的行為であり、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に当たるとすることは困難。
本件は、ペットの販売等の事業を営む請求人が、原処分庁から請求人の過少申告には隠蔽又は仮装の事実があるとして所得税等に係る重加算税の賦課決定処分が行われたため、その全部の取消しを求めた事案である。請求人は、税務に対して無知であることに加えて、日々の業務に追われていたために、書類の保管を適切に行えなかったものであるなどと主張。審判所は、原処分庁は資料の隠匿等は主張していないことから、過少に申告する意図を外部からもうかがい得る特段の行動について検討し、重加算税賦課の可否について判断を行っている。
審判所は、請求人が帳簿を作成しなかった点は、請求人や内妻は青色申告者に帳簿の作成や保存の義務があることを認識しておらず、売上げは犬の売買を仲介するウェブサイトの販売履歴や預貯金通帳の入金額により、ある程度の金額が把握できると考えたため、帳簿を作成せず、請求書等を破棄したと述べており、これが虚偽であると認めるに足りる事実や証拠は存在しないと指摘。また、帳簿を作成せずに請求書等を廃棄することは、請求人自身においても、正確な収支の把握を困難にし、税金の過少申告のみならず過大申告の危険をも生じさせるものであることからすると、直ちに過少申告を意図したことによる行動とは認められない上、請求書等を廃棄するということ自体、外部との接点を有しない内部的な行為であるから、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に当たると評価することは困難とした。また、売上げの一部を内妻名義の預貯金口座に入金していた点についても、内妻名義の預貯金口座に現金を入金することは部外者の関与を要するものとはいえず、内部的な資金移動と評価せざるを得ないとした。
したがって、審判所は、請求人が不動産等の高額な買い物をしていた事情も見当たらないことからすれば、請求人が帳簿を作成せず、請求書等を廃棄していたなどの事実を踏まえても、請求人が当初から過少に申告することを意図していたとは認められず、かつ、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたとはいえないとし、隠蔽又は仮装行為に該当する事実は認められないとして原処分の一部を取り消した。