- 令和6年度の租税滞納状況、新規発生滞納額は9,925億円で2年連続の増加。滞納発生割合は「1.2%」と低水準で推移。
- 悪質・処理困難事案への取組みである原告訴訟は147件を提起。滞納法人が代表者に対して行った弁済が債権者を害する行為に該当するとして、詐害行為取消訴訟を提起した事例(国側の勝訴)など。
国税庁は8月27日に「令和6年度租税滞納状況の概要」を公表した。令和6年度における新規発生滞納額は9,925億円(+24.1%)と、2年連続で増加した。同庁は前年に引き続き、徴収決定済額(申告などにより課税されたものの額)が過去最高を更新したことが一因であるとしている。滞納発生割合については「1.2%」となっており、過去10年、低水準に留まっている。滞納整理済額は9,488億円で、前年度より1,818億円(+23.7%)増加した。滞納残高は9,714億円であり、整理済額を上回る新規滞納(徴収決定済額)が発生しているため、前年度と比較して437億円(+4.7%)増加している。
また、国税庁は通常の滞納整理の手法では処理進展が図られない事案について、詐害行為取消訴訟を提起するなどの訴訟手法を活用した滞納整理にも取り組んでいる。令和6年度においては147件の原告訴訟を提起し、終結したものは144件となっている。終結件数のうち、国側の勝訴が15件、敗訴が1件(全部敗訴)、取り下げが6件、和解が1件、相続財産清算人選任等の申立てが121件であった。札幌局では、事実上廃業していた滞納法人の代表者が、同法人から貸付金の弁済として株式の売却代金の振込みを受けたが、その弁済は、滞納法人が支払不能の時に代表者と滞納法人が通謀して他の債権者を害する意図をもってされたものであり、債権者を害する行為に該当するとして、詐害行為取消訴訟を提起したもの(国側の勝訴)などがあった。
なお、財産等の隠蔽等により国税の徴収と免れようとする事案に対しては滞納処分免脱罪の告発を行っており、令和6年度においては6件(8人員)の事案を告発している。起訴されたのは6人員で、刑が確定したのは5人員(懲役刑(執行猶予付き)2人、罰金刑3人)であった。
このほか、国際徴収への取組みとして、海外へ財産が移転されるなどの国際的な滞納事案に対しては租税条約に基づく徴収共助の要請を行っており、令和6年度においては日本から要請した件数は15件(徴収額は約4,700万円)、外国の税務当局から要請を受けた件数は7件としている。