• BEPS行動計画10の検討課題とされていた利益分割法(PS法)の適用拡大は2016年以降に先送り。
  • 先進国の間では、途上国による「分割キー」の恣意的な選択によるPS法の安易な拡大を懸念する声が消えず。
  • 日本企業の間では、拙速な結論回避を歓迎する声も。

移転価格の算定方法の1つに利益分割法(PS法=Profit Sprit Method)がある。PS法とは、国外関連取引に係る分割対象利益を利益発生への寄与度等に応じて配分する方法であり、「比較対象取引」を見つけられない場合などに有用な方法とされている。

実際、近年は多国籍企業で統合的なビジネス・モデルが採用されるようになっていることや、取引において無形資産の果たす役割が高まる中、移転価格算定上の比較対象取引を見つけ出すのが困難なケースが増えており、TNMM(Transactional Net Margin Method=取引単位営業利益法)等の手法が機能しなくなりつつある。

これを受けBEPSプロジェクトにおいても、OECDガイドラインが公認する移転価格算定方法のうち、コンパラに頼らずとも適正な移転価格が算定されるPS法の適用拡大が検討されており、昨年12月の公開討議草案では、PS法が今後適用できる可能性のある9つのシナリオが提案されたところだ。

ところが、本件は行動計画10で検討課題とされていたにもかかわらず、2016年以降に結論が先送りされることが決定的となっている。

その背景にあるのが、先進国と途上国の間にある大きな溝だ。PS法については、日米間をはじめバイAPAを取得するなどの適用事例がこれまでも存在することもあり、日本は「PS法が洗練されることには異議なし」との立場をとっている。ただ、PS法では、「内国法人と国外関連者の合算利益の分割」においてどのような配分キーを選択するかにより結果が大きく異なるため、日本を含む先進国は、BEPSプロジェクトを契機に途上国が自国に税収が上がるように分割キーを恣意的に選択する形でPS法の適用を安易に拡大するのではないかとの懸念を抱いている。結論が2016年以降に先送りされたということは、先進国と途上国の間に存在する溝が埋まらなかったということを意味している。

日本企業の間では、「拙速な結論を避けたのは正解」とし、今回の結論先送りを歓迎する声も上がっている。

(情報提供:株式会社ロータス21)