• 府税調、個人所得課税・資産課税の見直しに関し、検討の方向性を示した論点整理を取りまとめ。
  • 個人所得課税では、若年層や低所得層の負担軽減を図る方向で所得控除を見直し。「ゼロ税率」や「税額控除」の導入が浮上。
  • 税収中立による“税負担の増加分”に関する具体案は今後検討。

政府税制調査会(会長・中里実東京大学大学院教授)は11月13日、個人所得課税や資産課税の見直しに関し、検討の方向性を示した論点整理を取りまとめた。

具体的にみると、個人所得課税については、所得再分配機能の回復を図るため、所得控除方式を採用している諸控除を見直し、税負担の累進性を高めることを通じて、若年層や低所得層の負担軽減を図っていくことを中心に検討すべきである旨が明記された。所得控除方式による諸控除のうち「人的控除」(扶養控除や基礎控除など)については、所得控除方式に代わる制度の在り方についても検討を行う必要があるとされた。今後、政府税調では、欧米諸国で採用されている「ゼロ税率」(一定金額までの所得について税率をゼロとするもの)や「税額控除」(算出税額から一定額を控除するもの)などを参考にしながら、各種所得控除の在り方について見直しの要否などが検討される。

資産課税のうち相続税については、平成25年度税制改正(基礎控除縮小など)の影響を見極めながら、資産再分配機能の適切な確保という観点からの検討に加え、遺産の社会還元の観点から相続税の対象の範囲の在り方について検討していくとされた。また、贈与税については、高齢者の資産保有の増加や老老相続が進んでいる現状を踏まえ、資産移転の時期の選択により中立的な制度の構築について、相続税との関係を含めさらに幅広く検討していく必要があるとされた。

なお、政府税調で議論されている個人所得課税や資産課税の見直しに関する議論は、減税による減収分を増税による増収分により補うという「税収中立」の考え方を基本として行われるもの。今回の論点整理では、若年層や低所得層の税負担減を図る方向性が示される一方で、その税負担減を補う税負担増をどこに求めるかについては具体的に触れられていない。この点に関し中里会長は、会合後の記者会見のなかで「今後検討しなければならない」と話し、来年の中期答申を見据え議論を行う方針を示す一方で、「どのような方々に負担を求めるかについては政治過程で議論していくことが最終的に決め手になる」と話した。

(情報提供:株式会社ロータス21)