• 政府税制調査会の専門家会合、「資産移転の時期に中立的な税制の構築に向けた論点整理」をとりまとめ。
  • 相続時精算課税制度は一定の少額以下の申告を不要に。また、教育資金や結婚・子育て資金に係る非課税措置は廃止が適当。

政府税制調査会に設置された「相続税・贈与税に関する専門家会合」(座長:増井良啓東京大学大学院法学政治学研究科教授)は11月8日、「資産移転の時期に中立的な税制の構築に向けた論点整理」を取りまとめた。論点整理では、法定相続分課税方式の見直しについては中期的な課題とした上で、当面の対応すべき課題として①相続時精算課税制度、②暦年課税における相続前贈与の加算、③経済対策等として時限的に講じられている贈与税の非課税措置の3点を挙げた。

相続時精算課税制度については、贈与・相続を通じて資産移転の時期の選択に中立的な税制となっているものの、創設当初と比べ、利用件数が減少しており、広く活用されているとは言い難い状況にあると指摘。専門家会合では、同制度の使い勝手の向上のほか、少額贈与に係る申告や記録管理の事務負担を軽減する観点から、一定の少額以下は課税しないことが考えられるとしている。相続時精算課税制度は、暦年課税とは異なり、110万円以下の少額の贈与であっても申告しなければならないことが適用のネックとされている。

また、暦年課税における相続前贈与の加算については、現行の加算期間(3年)を延長すべきとの意見や、加算期間を長い期間に設定する場合には相続税の贈与税額控除に際し還付を可能とすることについて検討すべきとの意見が紹介されている。

贈与税の非課税措置(「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置」「教育資金の一括贈与に係る非課税措置」「結婚子育て資金の一括贈与に係る非課税措置」)については、富裕層の子弟の教育等の資金支援を促し、世代を超えた格差の固定化につながりかねない懸念があると指摘。特に、教育資金や結婚・子育て資金に係る非課税措置については、制度創設当初と比べ、適用件数も大きく減少しているほか、これらの措置で認められている使途については、近年、公費でカバーされる部分が増加していることなどから、相続時精算課税制度の使い勝手の向上と併せて、廃止する方向で検討することが適当ではないかとしている。これら2つの非課税措置は令和5年3月末で期限切れになることから、年末に検討される令和5年度税制改正で制度の存廃を含め見直しが行われることになる。

(情報提供:株式会社ロータス21)