• 住民登録の転出入を繰り返した請求人の行為などが「隠ぺい」又は「仮装」に該当するかが争われた裁決。
  • 国税不服審判所は、住民登録の転出入を繰り返すことにより米国の居住者であるかのように事実を装っているほか、源泉徴収されていない著作権使用料を米国口座に送金させた請求人の行為は、「隠ぺい」及び「仮装」に該当すると判断。

本件は、住民登録の転出入を繰り返した請求人の行為などが「隠ぺい」又は「仮装」に該当するかが争われた事案である。請求人は、①国民健康保険料の負担を避けるため、住民登録地を日本から米国に移したにすぎないこと、②米国で金銭が必要となる場合に備えて、請求人の著作物に係る著作権使用料を米国の請求人名義の銀行口座(米国口座)に送金させたにすぎないこと、③著作権使用料については、源泉徴収がされ既に納税がなされているものと認識していたことから、「隠ぺい」又は「仮装」(国税通則法68条)に該当しないなどと主張した。請求人は、平成19年1月以降は日本の居住者であった。

審判所は、請求人は住民登録の転出入を繰り返して、あたかも米国の居住者であるかのように事実を装っており、また、源泉徴収されていない著作権使用料を税務当局から把握されにくくするため、米国口座に送金させる方法により、著作権使用料を受領していたという事実を隠ぺいしていたと認められるとし、これらの請求人の行為は、「隠ぺい」及び「仮装」に該当する事実があったとの判断を示した(東裁(所・諸)令元第20号)。

なお、同事案に関連して前述の請求人(以下、A)に著作権使用料を支払っていた会社も、著作権使用料の支払先が日本の居住者であることを認識していたにもかかわらず、源泉徴収すべき所得税等を納付しなかったなどとして、原処分庁から重加算税の賦課決定処分を受けたため、処分の一部取消しを求めていた。

この点、審判所は、著作権使用料の各支払時点において日本の居住者に該当することを認識しながら、Aが租税条約に規定する免税措置を受けることができる米国の居住者であるかのように装った内容の請求書を作成したといえることから仮装に該当し、著作権使用料の支払に係る源泉所得税等の不納付については、重加算税の賦課要件を満たすとの判断を示した。ただし、A宛ての請求書に日本の住所が記載されている分に関しては重加算税の賦課要件を満たさないとして処分を一部取消している(東裁(諸)令元第19号)。

(情報提供:株式会社ロータス21)