• 総額表示義務の特例が今年度末で期限切れ。政府は期限延長しない方向も、一部の小売業者からは税抜価格表示の恒久化を求める声。
  • 期限通りの廃止となった場合には、一定期間、総額表示義務が貫徹されず「税抜価格」のままの値札が残っていたとしても、税務執行上は総額表示義務違反を問わないようにしてはどうかとの意見も。

消費税の転嫁対策特別措置法がいよいよ令和2年度末で適用期限を迎える。こうした中、同法で認められている「総額表示義務の特例」の恒久化を求める声が、比較的中堅・小規模の小売業者から上がっている。

周知のとおり、「総額表示義務の特例」とは、二度に渡る消費税の引き上げの中で、事業者における値札の貼り替え作業等の事務負担への配慮及び消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保の観点から、税込価格であると誤認されないための措置を講じている場合に限り、税込価格を表示することを要しないとするもの。例えば「1,800円(税抜価格)」「1,800円+消費税」といった表示は、誤認防止措置をとっている適正な表示として認められる。

転嫁対策特措法がこのまま適用期限切れとなれば、「総額表示義務の特例」も消滅することとなる。本誌取材によると、政府は適用期限を延長をしない方向で検討している。消費税の総額表示義務は、事前に「消費税額を含む価格」を消費者に一目で分かるようにするため平成16年度から導入された経緯があるが、税制当局としては、転嫁対策特措法の適用期限切れを契機に“原点回帰”したいと考えているようだ。

消費者庁が最近公表した物価モニター調査結果でも、多くの消費者が総額表示を望んでいることが明らかになっているが、企業側、特に膨大な事務負担が生じることとなる小売業界の意見は分かれている。百貨店業界などは、転嫁対策特措法の廃止を見込み、粛々とタグの付け替えに向けた作業を進める方針だが、スーパーなどの小売業者から構成される日本チェーンストア協会は、税抜価格表示の恒久化を求める税制改正要望を9月10日付けで出している。アパレル、食品業界でも同様の動きがある。コロナ禍の中、値札の付け替え作業はコスト的にも事務的にも決して負担は小さくないからだ。
小売業者からは、仮に期限通り転嫁対策特措法が廃止されたとしても、その後一定期間は「税抜価格」の値札が残っていた場合でも、税務執行上は総額表示義務違反を問わないよう求める声も上がっている。本件は令和3年度税制改正の論点となる可能性があろう。

(情報提供:株式会社ロータス21)